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5

柳沢くんはとてもとても優しかった。僕は宝物のように抱かれた。


愛しくて。切なくて。抱かれている間、幸せで泣いた。


でも、これは全て偽り。彼の言葉も、彼の腕も。ゲームの最後の仕上げとしては、最高の出来だろう。

それでもいい。彼は最後に一番欲しかった言葉をくれた。優しい彼氏を演じてはいても、決して言ってはくれなかった言葉をくれたのだ。
柳沢くんが帰った後、僕は彼のぬくもりを忘れないように自分の体を強く抱きかかえ泣きながらながら眠りについた。


次の日、学校に行った僕をクラスの皆がクスクスと笑いを押し殺しながら見てきた。
恐らく、罰ゲームが終了したことを柳沢くんから聞いたのだろう。
柳沢くんは、この日学校には来なかった。気まずいんだろうな。


…気にしなくてもいいのに。
元から覚悟はできているから。


その日1日胸を張って過ごす僕を、柳沢くんの罰ゲーム仲間が怪訝な顔で見ていたなんて知らなかった。



「山下ぁ、ちょっと来いよ。」


放課後、僕は柳沢くんの罰ゲーム仲間である三人に空き教室に連れて行かれた。
中沢、谷繁、結城と言う。三人とも、イケメンで人気がある人たちだ。


「…お前さ、柳沢に抱かれたんだろ?」


ニヤニヤと嫌な笑いを浮かべながら僕を取り囲む。


「うん。それがどうかした?」


平然と答える僕に、三人が顔に苛立ちを浮かべた。

「…お前、勘違いしてない?あいつがお前と付き合ったのは、罰ゲームなの。罰ゲーム!根暗でうじうじしてるキモ下をさ、ヤッちまってポイしちまおうって話なの!」
「くくっ、本気にした?お前毎日すげえ嬉しそうだったもんなあ。ばっかみてえに顔赤くしてさ」
「『柳沢くん、大好き〜』だって。超キメエ。」


三人は、僕を小突きながらげらげらと笑う。


「…おかしいかな?僕は柳沢くんが大好きだから、大好きって言ってたんだ。それは嘘じゃない」


きっぱりと彼らの目を見て言う僕を、中沢が苛立って思い切り蹴り飛ばした。


ガン!ガラガラ…


周りの机を巻き込んで床に倒れた僕に、蹴り飛ばした中沢が馬乗りになる。


「てめえ、調子に乗ってんじゃねえよ。なぁにが『大好き』だ!柳沢からしたら、大迷惑以外なんでもねえっつの!キモ下のくせにえらそうに、てめえはピーピー泣いてりゃいいんだよ!」


ガン!と頬を殴られる。

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