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2

彼は覚えていないだろうけど、僕は彼に一度会ったことがある。
校庭で、僕は体育の授業のあとクラスの子に一人で片付けるように言われた。
僕は根暗だから、結構そうやってパシリに使われることが多かった。
最後のボールをカゴに入れようとしたら落ちちゃって、追いかけた先にいたのが柳沢くんだった。


柳沢くんは、桜の木の下で眠っていた。
風が吹いて散った花びらが空に舞って、花吹雪の中眠る彼はとてもキレイだった。



一目惚れ、だったんだ。


それから僕は彼をよく目で追うようになった。彼はとても明るくて。さりげなく優しい。
毎日毎日、どんどん彼を好きになっていく。



だから教室の廊下で罰ゲームが聞こえたとき、僕は神様に感謝した。
嘘でもいい。偽りの優しさでも、例え仕方なしにでも。彼に一度だけでも触れてもらえるなら。


僕は彼の告白に頷いた。


「山下、帰ろうぜ」
「あ、うん。すぐ行く!
あっ!」

迎えに来た柳沢くんに駆け寄る途中に、躓いた。ぎゅっと目をつぶったけど僕の体は床にはぶつからなかった。


「っと、あぶねーな。気をつけろよ?」
「あ、ありがと…」


柳沢くんが咄嗟に助けてくれた。なんて逞しい腕の中。ドキドキして、思わずきゅっと彼の腕を握りしめる。


「ヒュー、やっさしいね〜!さすが彼氏!」
「いいね、山下!柳沢だいすきー?」
「うるせーぞてめえら!」


クラスのみんなは、これが罰ゲームだって知っている。僕だけ、知らないことになっているんだ。だからみんなこうやってことあるごとに知らないふりをしてはやし立ててくる。
それで赤くなる僕をみて影で笑っているのを知っている。きっと罰ゲームの最後が実行された時、ネタバラシをしてみんなでまた僕を笑うためにクラスに罰ゲームであることを報告しているのだろう。

からかわれるたび、嫌そうに眉を寄せる柳沢くんにも僕は気づかない振り。でも。



「…うん、大好き」


僕は自分の気持ちに嘘はつきたくないから。
笑顔で、みんなの前で言った。

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