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5

テンプレみたいな男だ。


初めて四天王寺を見たときの第一印象だ。

それ以降、特に接点もなく噂話でしか聞かない彼に特に興味などなかった。
その時の自分には千里がいれば十分だったし、愛しの京也様さえいればそれでいい。

だが、何を思ったのか相手が自分に近づいてきた。初めて話しかけられた時は正直驚いた。ここまで言動というか、態度の似る人間がよくいたものだと。それだけに、晴彦は四天王寺との接触はこれ以上は避けようとあえて冷たくそっけない態度で返したはずだった。プライドの高い四天王寺の事だ、これほどまでにばかにしたようないいかたをすればもう二度と関わっては来ないだろうと思っていたのだ。
だが、晴彦の読みは外れた。それからしょっちゅう絡んでくる四天王寺に、内心焦りが生まれていた。
琢磨ではないのに、その後ろに琢磨の影を見てしまう。そして、晴彦はそのうち琢磨を、京也を現実で感じたくなってしまった。

四天王寺に向かって放った言葉は本当だ。四天王寺は、晴彦にとって代わりでしかなかった。画面越しでしか触れ合うことのできない京也に触れてみたかった。


本当は気づいていた。いくらこちらが愛を語っても、愛の言葉を返してくれても、それは真実であって真実ではない。琢磨本人を作り出すことなど出きるわけがないのだ。
同じシーン、同じシチュエーション、同じ言葉、同じ愛。それはそれ以上にも以下にもならない。
何年経とうが、どれほど焦がれようが晴彦の中で琢磨も京也も変わることがない。真に求めるものなど手には入らないのだと心の奥で気づいていたのだ。


四天王寺に抱かれながら、京也の、琢磨のような口調で話す彼の声を聞きたくはなかった。それは琢磨ではないと嫌でも気付かされるから。

四天王寺を代わりにしながら、琢磨にはもう二度と触れることのできないのだと余計に思い知らされることが怖かった。

四天王寺の事などみじんも考えなかった。四天王寺は、セフレが多く存在する。本気の相手を作ったことがない。ひどく傲慢でプライドが高く、自分に従わないものを屈服させることが目的で切るにも繋がるにもあとくされなく何も残らないはずだったのだ。

だが、四天王寺は何を思ったのか晴彦に対して今までとは違う行動をとり始めた。それは晴彦の予定にはない事ばかりで、ゲーム以外でそんなお互いを知るための事などしたがない晴彦は困惑してしまった。

そして、ひとつ、またひとつ知っていく四天王寺の新たな一面に晴彦は焦った。そんなつもりじゃない。四天王寺という男の事を知りたいわけじゃないのに、代わりでしかないはずなのに四天王寺を知ることに間違いなく喜びを感じている。
それと同時に、自分の中での京也への思いが四天王寺へとすり替わっていく。


変わりたくない。いつまでも待っていると言った。イイコにしてればご褒美をくれると言った。京也を、琢磨を違う人物へと塗り替えてしまうような悪い子には、約束を守れないような子には琢磨はご褒美をくれない。

こんな俺が、誰かに愛されるはずがないんだ。

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