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『愛している』


そう発して、自分を見るその男はまるで知らない男のように見えた。何と言ったのだ。この目の前の男は、今自分に向かって何を言ったんだ。

「お、俺は、お前を、そんな風に見るつもりはない!」
「そうかな」

思い切り否定の言葉を口にする晴彦を、四天王寺の視線が貫く。
誰か、誰か助けて。
じり、と下がった晴彦に、少し大きく一歩進んで距離を詰める。

「お前は、ぬるい世界で生きていたいと言ったな。だがそれは必ずしも真実じゃあないだろう。お前の好きだと言うあいつが現実世界に抜け出してきたかのような俺に抱かれることで、ゲームをリアルに実感したかったんだろうが、それだけじゃないはずだ。
お前は、少なからずそれが現実でありますようにと願っていたはずだ。」

じり、とまた一歩、四天王寺が晴彦に近づく。

「く、くるな!」
「怖がるな、晴彦。お前が望むなら、この現実世界で、俺がお前の望みをかなえてやる。だが、勘違いするな。あいつのかわりなんかじゃねえ。お前は、野原晴彦として四天王寺那岐と恋愛をしろ」

がしり、と腕を掴まれ眼前に顔を寄せられる。四天王寺のその目は、まるで百獣の王が獲物を捕らえたであろうその捕食者の目だ。

「し、てん、の…」
「俺と、ゲームをするんだ。そして、晴彦。お前自身で、お前の意志で、『俺を愛せ』」


作り上げたゲームの、琢磨に生き写しの愛しい京也の決め台詞が四天王寺の口から発せられた瞬間、晴彦は熱い熱情に全身を包まれたかのような感覚に陥った。

熱い。熱くてたまらない。焼けてしまいそうだ。

全身を駆け巡るその熱は、晴彦の心の奥、ひび割れたガラスをドロドロに焼いて、とかして、

「う…ぁ…」

自分が真に望んでいたものが、京也様でも、琢磨でもない…


いつの間にか、四天王寺であったのだと気付いた。

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