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転校生は超絶かわいこちゃん

「晴彦ちゃん!見た!?転校生見た!?」
「見たくなくても見るっつの。俺のクラスだろうが」
「だよね!晴彦、ありがとう!お前と友達でほんとによかった!」


晴彦から朝に聞いたとおり、その転校生はやってきた。名前を羽曳野悠人(はびきの ゆうと)。晴彦に会いに行くという名目で転校生を見に行った俺は一目見て鼻血をふきそうになった。

「超絶かわいこちゃん…!」

ふわふわの柔らかそうな亜麻色の髪、まつげの長いぱっちりとした目、桜色の唇。色白で華奢で、どこか儚げ。
そう。羽曳野は、美少女顔負けの美少年だった。

休み時間の度に羽曳野を一目見ようといろんな奴らが晴彦のクラスに訪れる。だが、あまりの高嶺の花な雰囲気に誰一人として話し掛ける事ができない。

「フラグが…!色んなフラグが頭に沸いてまとまらない…!」

なんて萌えの塊な転校生なんだ羽曳野くんよ!あ!今勇気を出して一人の男子生徒が!うおお、微笑まれて固まっちまったよ!

「晴彦、俺毎休み時間きてもいい?」
「いいけど見てるのばれない様にしろよ」

晴彦にお願いを取り付けたと同時にチャイムが鳴る。うきうきしながら教室に戻ると、またもや高見沢が不機嫌な顔で俺の前で仁王立ちをした。

「どこ行ってたんだよ」
「え?晴彦んとこ」
「…ふうん」

晴彦の名前を出すと一瞬眉が引きつったかのように見えたけど、高見沢はすぐにくるりと踵を返してさっさと自分の席に戻ってしまった。なんなんだ。その日一日、休み時間のたびに晴彦のところにかわいこちゃんウオッチングに行く俺を、教室に戻るたび高見沢が何だか苦い顔をしてみてきた。俺は自分の行動に気を付けて普通に晴彦に会いに行ってるだけを装っていたけど、もしかして腐男子じゃねえのって疑われてるならどうしようかって高見沢の不機嫌な顔を見るたび心臓がバクバクだった。





「はーるーひーこおおおおおお!!」
「うるさい」

それから一週間がたったある日、俺は晴彦の部屋に叫びながら突入した。あまりの心の叫びに晴彦が俺に向かってまた画面から目を離すことなく今度は筆箱を投げてくる。だから固形物はやめて!

「なあ、聞いたかよ!?あのうわさ!」

転校生が来て一週間。あいも変わらず羽曳野ウオッチングをしていた俺は、この学園の中でとんでもないうわさが流れているのを耳にした。それは、難攻不落の高見沢が羽曳野に落ちたという噂だ。

「ただの噂じゃねえか。証拠も何もねえんだろ」
「でもでも、最近よく一緒にいるし!」

そう。ここ最近、高見沢は羽曳野と一緒にいるところをよく目撃されていた。美男美女の取り合わせだ、噂にならないわけがない。初めて耳にしたその時俺はもう興奮のあまりその場で飛び上ってしまった。

「恋愛嫌いの人気者が儚げ健気な美少年にノックアウト!うわ・・・萌える」
「俺も萌える」
「え!?」

今まで京也様以外どんなカプにも見向きもしなかった晴彦が、萌える…だと!?

「そんで?本人に確かめたのか?」
「え?…いや…」

晴彦に聞かれて俺は急にしどろもどろになってしまった。…そう、なんだ。高見沢と羽曳野が噂になってると知ったのは2日前。実は、俺も二人一緒にいるところを目撃している。以前の俺なら、上手く高見沢から事の経緯や真相を何でもない風に聞きだしていただろう。でも、なんでだろうか。二人一緒にいるのを見た時、俺はそれを高見沢に確認することができなかった。
俯いてもごもごしていると、キシ、と音がして見ると珍しく晴彦が画面ではなく俺を見ていた。
その目を見てなぜか俺はひどく追い詰められた気持ちになった。人の心を見透かすようなその目に、俺はなんだかこのままじゃヤバいと感じて立ち上がる。

「き、今日!今日聞いてみる!」

焦ったように返事をすると、そのまま晴彦が何か言う前に飛び出してしまった。





「ちっ、逃げられた。手遅れになる前に自覚させてやろうかと思ったのに。」

俺がいなくなった後、晴彦が苦々しい顔をしてそう呟いていたのは知る由もない。





「おかえり」
「あ…た、ただいま…ぶは!」

自分の部屋に戻ると、黄色にかわいいくまさんのアップリケのついたエプロンをつけた高見沢が出迎えてくれた。思わずマジ受けして噴き出す。

「ぶ…、くく、なにそのエプロン、おニュー?」
「しょうがねえだろ、いつも使ってるやつがまだ乾いてねえんだから」

むすっと膨れながらキッチンに戻る高見沢の後をついていく。

「いやいや、かわいいよ。たかみん似合ってるぅ」
「お前もう黙れ」

俺がからかうと真っ赤になって口の中に無理やりいちごを一つ突っ込んできた。
高見沢が俺の口に何か無理やり突っ込んでくることは今まで結構ある。今日のこれも、なんてことないいつものおふざけの一環。

「あめえ」
「…!」

そう思っていたのに、なんと高見沢は俺の口に突っ込んだ指をぺろりとなめた。
無理やり押し込んだために、少しいちごが潰れて指先に果汁がついたんだろう。なんてことない。なんてことないはずなのに。

「い、いやぁ〜ん、たかみんったらエロいわあ〜」

なぜかその一連の行動にひどく動揺してしまった俺は、いつものようにおちゃらけた口調で返すもその声が若干裏がえっていた。

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