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「…で?」
「だから、さっき言った通りだって」

苛々と腕を組みながら目の前にいる男を睨みつける。相手は四天王寺のそんな態度にもまるで怯むことなくため息をつきながら答えた。

理解できないの?とでも言わんばかりのその態度に四天王寺の苛立ちがどんどんとつのる。

理解できないのは貴様の言うことだ。

生徒会室を飛び出した四天王寺は、今日の夜もまた晴彦を呼び出してやろうと歩きながら携帯を開いた。前を見ていなかったために角から来た人物にぶつかり、どこを見ているんだと怒りに静かな声を出して顔を上げると、そこにいたのは今最も顔を見たくない男である安田千里だった。
自分を見て謝罪するどころか『見つけた』と一言呟いて四天王寺を指さした。

この野郎、誰に向かって指さしてやがる。
こちとら貴様のせいでこの数日晴彦と最悪に関係が悪くなったと言うのに。

晴彦は、この男にだけは変わらず笑顔を見せているのだろうか。そう考えるだけで目の前の男の胸ぐらをつかみたくなった。
湧き上がる自分の感情に蓋をして、形ばかりの謝罪をして千里の横をすり抜け…

「待てって」

だが、それを千里が許さなかった。通り抜けようとした所で腕を取られ、話があると言われたのだ。


「だからどうして俺があいつの事を何とかしなければならないんだ」
「その理由は前にも言っただろ?晴彦はあんたにしか救えない」

幾度めのやり取りになるだろうか、四天王寺の言葉にうんざりしたように千里がため息を吐きながらそう告げる。今まで黙って、大人しくそれに淡々と答えていた四天王寺は最後の言葉にかっと血が昇った。

「ふざけるな!」

ばん!と二人話し込んでいた空き教室の机を思い切りたたいて、千里を睨みつける。

「俺にしか救えないだと?あいつが何を抱えて何に苦しんでいるのかなんて俺には関係ない。俺にとってあいつは…っ」

そう。自分には関係ない。晴彦がなんだと?俺にだけだとか、ふざけるな。あいつにとっての唯一はお前だろうが。他の誰にも向けない笑顔をただ一人向けられる。仲良くはしていても決して踏み入れせないあいつのテリトリーに唯一許される男。

そう。自分ではない。

晴彦に甘受されているのは、まぎれもなく貴様自身ではないか。

では、晴彦にとっての自分とはなんなのか。
自分にとって晴彦とはなんなのか。


「知ってるよ、あんたと晴彦の関係」

言葉の続きを口にするのを戸惑った一瞬、千里の方が先にその続きを口にした。

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