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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -




3

それからしばらく、四天王寺は同じことを繰り返した。自分を呼びつけ、食事をし、たわいのない話をし、晴彦を見送る。学校では初めのころと同じようにからかい交じりに絡んでくるものの、そのさなかにも時折甘いような視線を感じるようなことがあって晴彦はただただ困惑した。
新しい遊びだろうか。
四天王寺の意図が全く分からず晴彦は困惑するばかりだ。

あれではまるで、

一つの可能性を思い浮かべて晴彦は頭を振る。そんなばかな。あるはずがない。


四天王寺が、別の意味で自分に興味を持ち始めたということなど、あるはずがない。


思いついた可能性を必死に否定するために眉を寄せて頭を振る。
いつもと違う態度への自分の反応を見て楽しんでいるんだ。そうに違いない。

だが、晴彦が本当に困惑しているもの。それは、自分自身の心に他ならない。四天王寺の変化をどう捉えてよいのかわからない。今までのただ俺様で傲慢な男のままであったならよかったのに。少し、ほんの少しまともに付き合われただけで、心に隙を作ってしまいそうになる。

…そんなことは、望んでいないんだ。

パソコンの電源を入れ、起動させると晴彦はいつもの通りゲームを始める。

『どうしたんだ?子猫ちゃん。』

「…っ、」

いつもは胸がきゅんとするはずの、画面越しの愛しい人の言葉が、ひどく胸の端を抉った。



「どしたの?晴彦、」
「え…?」

それから2,3日ほど経ったある日の事、いつものように千里と中庭で昼ご飯を食べていると千里が心配そうに晴彦の顔を覗き込んできた。

「なにがだ」
「なにがって。自分で分かんない?晴彦、すっげえ顔色悪い。」

千里に言われて晴彦は自分の頬をそっと撫でる。…そんなに、ひどい顔をしているのだろうか。だが確かに、ここ最近四天王寺の新しい遊びに付き合わされて夜がまともに眠れていないのは確かだ。

「…貴様に心配されるとは、俺も落ちたものだ…」
「ちょっと晴彦ちゃん!俺だって気付くときは気付くんだかんね!」

はあ、とため息を吐いてつぶやくと千里がきゃんきゃんと噛みつく。それを無視して弁当のふたを閉めると、隣にいた千里が弁当を置いた晴彦の手を掴んだ。

「千里?」
「ほら、行くよ!保健室!」
「は?」
「は?じゃない!そんな顔で午後に授業でるとか言ったら怒るからな」

二人分の弁当箱を持ってから立ちあがり、次いで掴んでいる晴彦の手を引いて同じようにその場から立たせると千里はぐいぐいと手を引いて保健室のある校舎に向かって歩き出した。

「おい、千里、」

余計な事をするな、と声をかけるとピタリと足を止め俯く。だが、掴んでいるその手は外そうとはせずに逆にぎゅうと力を込められていた。

「…余計な事とか、言わないでよ。俺、ほんとに晴彦には感謝してんだ。いつだって、黙って俺の一番の味方でいてくれて、冷たくあしらってるようでほんとは誰よりも俺の事考えてくれてて…。
そんな晴彦に、俺も同じように返したいって思っちゃいけないの?」

頼むから心配するくらいは許してよ、と泣きそうな顔で振り向いた千里から晴彦は思わず目をそらした。

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