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2

隣りで眠る晴彦を、じっと見つめながら四天王寺はもやもやとした気持ちに苛まれていた。それは、晴彦を抱いている時に自分が仕掛けたことのせいだ。

いつもの目の光を取り戻した晴彦を愛撫する。与えられる快感に喘ぐさまはさながら舞を踊るかのようだと四天王寺は恍惚とした。だが、同時に先ほどの晴彦の表情が脳裏によぎる。

四天王寺は、一つの事を試した。

「気持ちいいか?」

四天王寺の問いかけに声を漏らすまいと唇を噛みしめながらわずかに首を縦に振る。自分に向かって手を伸ばす晴彦の手を取り、ちゅ、と手の甲に口づけるとそのまま耳元へと唇を寄せた。

「いい子だ…そうやって素直に応えろよ」

優しく耳元で囁いてやると、晴彦は体を硬直させた。

「や…」

途端に、四天王寺を拒むかのごとく身をよじり頭を振る。

「どうした?かわいがってやるからいい子にしな」
「いや…!四天王寺、いやだ…!」

その後の行為の間中、四天王寺はそんな風に晴彦に対していわゆる俺様だと言われるその口調でささやき続けた。


だが、晴彦は嫌だと泣きながら、離すなと言わんばかりに震える手を伸ばす。


何が嫌なんだ。何に怯える?何を求めている?


さんざん泣かせ、最後に晴彦を突き上げた時


『…キョウ…、さ…』


体をわななかせ、僅かばかりの吐精をすると同時に消え入りそうな声で呟き、意識を失った。



眠る晴彦の前髪をそっとなで上げ、赤く染まった目元を指でなぞる。
誰のために、何を思って流した涙なのか。

そっと布団に潜り込み、起こさないように後ろから抱き込む。確かに腕の中にいるはずなのに、まるで空気を掴んでいるかのようだ。四天王寺は、屈服させたはずなのに苦い思いを抱いた。



翌朝目覚めると、やはり晴彦の姿はそこにはなかった。舌打ちを一つして、シャツを羽織って起き上がる。
こんなにも、自分の部屋は広く殺伐としていただろうか。


「…ばかな」


ほんのわずか、それを好ましくないと思う心に自嘲する。確かにあったはずの温もりが一切感じられない自分のベッドを眺めて、かぶりを振って背筋をただした。

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