×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -




晴彦の影

ピンポーン…

「きたか」

部屋に響くインターホンの音に四天王寺はソファから体を起こし玄関へと向かった。ほんのわずかな距離の間に、そこに立つ人物を思い自分でも気付かず顔がゆるんでいる。

今日もたっぷりと泣かせてやるか。

がちゃりと玄関を開け、晴彦を見てにやりとあくどい笑みを浮かべた。
相も変わらず図太い、飄々とした顔をしている。それを自分の手で歪ませることができるのだと、思い通りになるのだと考えると楽しくて仕方がなかった。

「よく来たな、子猫ちゃん。かわいがってやるぜ?」

にやり、と笑い晴彦をぐいと引き寄せて顔を寄せる。だが、また。自分の吐いたセリフを聞いたとたん、晴彦は一瞬、まるで幼子が泣く寸前のような顔をした。

「…」
「…なんだ?どうした」

思わず黙って見つめると、すでに素に戻っていた晴彦が怪訝な顔をして自分を見て問いかけてきた。

「…どうしたはてめえだ」

それに意味の分からない苛立ちにかられ、四天王寺は手を引き晴彦を寝室へと投げ入れた。

うつ伏せに倒れた体を向き直す晴彦に、ネクタイを緩めながら近付き覆い被さる。顔を近づけると大人しく目を閉じた晴彦にふと口元が緩み、ちゅ、と軽く口づける。

「…素直ないい子にはご褒美をやらねえとな」

からかうつもりで発した言葉。

だが、それを聞いた晴彦の顔を見て四天王寺はにやけた顔を消してしまった。


―――まただ。


いつもの、余裕のある人をバカにしきった不敵な面構えなどない。
晴彦は先ほど一瞬垣間見せた、まるで、小さな子が泣くのを必死に耐えるような表情をしていた。

「んぅ…!」

小さく舌打ちを一つして、勢いよく晴彦に口づけると四天王寺は文字通り貪るようにキスをする。口内に舌を差し入れ、逃がすものかとばかりに晴彦の舌を追いかけ、絡ませた。

「は…っ、な、に」
「大人しくしてな。可愛がってやるからよ」
「…っ!」

にやりと笑ってそう言えば、晴彦がまた泣きそうな顔をする。

「いや…っ、いや、だ…!」
「ほら、暴れんな。しょうがねえ子猫ちゃんだな?」
「やめろ!その言い方はっ…」

聞きたくない、とばかりに頭を振って逃れようとする晴彦の両手を捕え、片手で晴彦の両手を掴み頭上に縫い付ける。そして、もう片方の手で嫌がって首を振る晴彦の顎を掴んで無理やり自分の方へ向けて固定した。

「…目を開けろ」

低い声で、ぎゅっと目を閉じる晴彦に命令を下す。それに晴彦は固定されている顔をわずかに横に振った。

「目を開けるんだ。俺を見ろ」

有無を言わせない口調に、恐る恐る晴彦が閉じていた目を開ける。目の前にあるその整った顔に、晴彦はそれが誰であるかを確認すると先ほどとは打って変わって強い目で四天王寺を睨みつけた。

「そうだ。それでいい。お前を抱くのはこの俺だ。四天王寺那岐だ。」

にやりと笑うともう一度噛みつくように晴彦に口づけた。

[ 55/81 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]

top