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5

「…四天王寺…?」

四天王寺のその行動に晴彦も笑みを消して不思議そうに見つめる。
一体なんだというのだろう。

「…野原」
「…?、!おい、まて…っ、」

四天王寺の顔がそのままゆっくり近づき、あと数センチ、というところで四天王寺がしようとしている行為に気付いた晴彦が顔を逸らす。
それでも四天王寺の力にはかなわず、無理やり逸らした顔をまた四天王寺の方へと向けられた。

しょうがないか。

抵抗をしていた晴彦が諦めて目を閉じようとしたその時


「はーるひこおおおおおお!」
「!」

聞きなれた自分の名を叫ぶ声に閉じかけていた目を大きく見開き、目の前の人物を思い切り突き飛ばした。

「晴彦ちゃん!やべえ、やべえよ!風紀委員長が平風紀にお仕置きっつって…あれ?」

興奮してわめきながら現れた千里は、晴彦を見て突然ぴたりと動きを止めて首を傾げた。

「なんだ?」
「…なんだはこっち。どした?晴彦。なんかあった?」

怪訝な顔をして自分を見る千里に同じく怪訝な顔をして返す。

「顔、焦ってる。なんかあった?」

いつもと同じ無表情を装っていたつもりが、ほんのわずかの変化を読み取ったのだろう千里の質問に内心ヒヤリとする。
こいつは、どうしてこうもよけいな勘が鋭いのだろうか。

「寝てたのにお前が人の名前を叫びながら走ってくるからだ」
「いつものことなのに」
「…そうだな。お前が呼んでいいのは高見沢だけだと思っていたんだがな、なあ、高見沢?」

丁度千里の後ろから高見沢が現れて、晴彦はそれに気づいていない千里ににやりと笑って嫌味っぽく言ってやれば千里は真っ赤になって勢いよく後ろを振り返った。

「そうだなあ。千里、彼氏の前で他の男の名前を呼びながら走るだなんて悪い子だな、ん?」
「たたたたたかみざわ」

にやりと笑って近づく高見沢に明らかに動揺して挙動不審になった千里の背中を高見沢の方へ蹴り飛ばしてやると飛んできた千里を高見沢はしかと受け止め逃げ出せない様に羽交い絞めにした。

「連れて帰れ」
「ご協力ありがとう」
「わああ!晴彦ちゃんの鬼ー!」

そのままずるずると高見沢にひきずられていく千里に手を振りながら、晴彦は胸をなでおろした。と同時に、後ろの茂みから恨みがましい顔をして頭をさすりながら四天王寺が現れる。

「てめえ…何も突き飛ばすことねえだろうが」
「手加減はしてやった」

しれっと言い放つ晴彦に、四天王寺が舌打ちをする。

「…さっきはあんなに…」
「あ?」

言いかけて、四天王寺が口をつぐんだのに晴彦が怪訝な顔をすると、四天王寺はなんでもない、と立ち上がる。傍を抜けようとして歩き出した四天王寺が晴彦の隣で一旦足を止め、無表情に晴彦の顔を見つめた。

「なんだ」

全く考えの読めない四天王寺の表情に、晴彦が何か用があるのかと問いかける。すると四天王寺は体を晴彦の方へ向け、さらに一歩近づいた。

「おい」
「…そんなにあいつにばれたくねえのか」

あまりに近いその距離に離れろ、と言いかけて四天王寺の言葉に声を止める。じっと見つめられて晴彦は小さくため息を一つ吐いた。

「そうだな。あいつは人一倍うるさいからな」
「うそつけ」
「…っ、」

理由を口にすると、四天王寺は鼻で笑って晴彦に噛みつくように口づけた。

「いいさ。あいつがいる限りおまえは俺に逆らえねえんだからな」
「…」

ふん、と見下すような笑いを落とし、四天王寺はその場から去っていった。

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