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隣で眠る晴彦の髪をかきあげ、その端整な顔立ちをじっと見つめる。
少し前まで行われていた情事を思い出すとそれだけで体が熱くなるのを感じた。
相性がいいというのだろうか。
晴彦の体は今まで抱いてきた誰よりも素晴らしいものだった。
自分のために神が誂えたのではないかと思うほどに。
普段無表情だった晴彦が、頬を朱に染め声を耐えきれずに出す。シーツの上を踊るかのごとく乱れる様は四天王寺の情欲をかき立てるだけでなく、まるで芸術でも見ているかのように胸を熱くした。
だが、同時に時折自分を見つめる晴彦の目に言いようのない不安を抱く。
それは今まで感じていた、あの違和感。
こいつは、何を見ている?
強く抱きしめていてもまるでぼやけた霞を抱いているように感じるときがあった。
そう考えて、四天王寺は頭を振る。
何を。
こいつが何を考えていようが何を思っていようが全く自分には関係のないこと。自分は、この男をひれ伏すことができればそれでいいのだ。例え学力だけであったとしても、四天王寺を越える者がいる。それは許されることではない。
点数で、それほどの差があるわけではない。事実、四天王寺は主席の晴彦に続き二番手にいつも位置するのだ。その差、わずか1、2点。
だが、その1、2点が四天王寺にとっては天と地の差がある。
自分がどれほどもがこうが飄々として上に立つ晴彦が腹立たしくてしかたがなかった。
だが、今は違う。
この男は、自分の手中にあるのだ。
「しばらく、楽しませてもらおうか。」
そのすました態度の裏っかわを暴いてやる。
眠る晴彦にそっと触れるだけのキスをして、満足げに顔をゆるめベッドに横たわった。
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