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7

薄暗い教室に一人残った四天王寺は今日一日絡んでいた晴彦の事を思い返していた。実に面白い反応をするやつだ。自分に全く興味がない。自分だけではない、ここにある全ての者に興味がないかのように思える。


昨日、こちらの仕掛けた挑発にも全く動じることがなかった晴彦。あんな風に自分に対してなんの評価も示さない奴は初めてで、初めて味わう屈辱に四天王寺は腸の奥が煮える思いだった。

奴を自分にひれ伏せさせるにはどうしたらいい?
次はどうしてくれようかと考えながら晴彦の教室を出ると、向かい側から一人の生徒がぱたぱたと駆けてきた。その生徒は自分を見ると一瞬だけ目を見開き、軽く頭を下げて通り過ぎた。なんとなく振り返りその生徒の動向に意識を向ける。
その生徒は先ほどまで自分のいた教室の扉を開けて中を覗くとすぐにまたどこかへ向かって駆け出した。

生徒会室に戻った四天王寺は会長席に深く腰掛けて先ほどの生徒を思い返していた。

あれは確か、この学園で自分と同じくファンクラブのある人気者の一人の高見沢というやつの彼氏ではなかったか。安田千里とかいったか。羽曳野という転校生がきたときによく噂で耳にする名前だったのを覚えている。
そういえば、と四天王寺はそのときの事を思い出していた。晴彦には多くの友人がいるが、その中でもあの生徒は特別ではなかったか。

確か、特別室の管理記録によればあの安田千里という生徒は1ヶ月ほど体調不良を理由に特別室で授業を受けていたはずだ。その時の使用許可の申請を出していたのは、野原晴彦。


そのとき以外にも、よく二人でお互い教室を行き来しているはず。


四天王寺は目を細め口角をあげる。

あの、自分の周りの世界になんの興味も示さない晴彦がそこまでする相手。それは晴彦にとって特別な相手だということにほかならない。



これを利用してみるのはどうだろうか。



案の定、晴彦は簡単に自分に落ちた。
ただ、安田の名前と高見沢と付き合っているという話を口にしただけで。

どうやら晴彦は安田が絡むと感情のままに行動するらしい。いつもの晴彦であるならば、友人の名とその彼氏の話を出されたとしてもそれはなんら自分に関わりのないことだと眉一つ動かすことはなかっただろう。

だが、安田相手だとそうではない。

その考えに行き着いた四天王寺はひどく面白くない気分だった。


だがまあいい。理由が何であれ、結果晴彦を自由にする権利を得たのだ。あのすました顔の男を自分のさじ加減一つで自滅に追い込むこともできる。晴彦の手綱を握っているのは自分なのだと思うとひどくぞくぞくとした。

そうして、ふと自分が言葉を発するたびにおかしな空気を醸し出す晴彦に首を傾げる。あの表情はなんだったのだろうか。小賢しい言い争いをするのはいつものことで、そのさなかにあんな顔を見たことはない。どうしてだ?何をきっかけにあんな顔を見せる?

まあいいだろう。これからいくらでも時間はあるんだ。

四天王寺は新しいおもちゃを手に入れた子供の様にひどく高揚した気分で寮へと戻った。

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