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2

毎日毎日、何が楽しいんだか。

晴彦は四天王寺の事を完全にいないものとして扱った。だが四天王寺は全く意にも介さず晴彦の元を訪れては絡んでいく。そんなある日、晴彦が一人放課後に千里を教室で待っているときの事だった。いつものようにどう嗅ぎ付けたんだか四天王寺が現れた。

「よう、相変わらず仏頂面してやがんな。」

ニヤニヤと笑いながら晴彦の前の席に座り、頬杖をついて本を読む自分を覗き込んでくる。

何が楽しいんだか…。

晴彦は目の前に座る四天王寺をちらりと見てからまた手元の本に視線を落とす。読んでいたはずの本が不意に目の前から消え、顔を上げると四天王寺が晴彦の本を奪いぱらぱらと流し読みをしていた。

「いつもいつも何の本を読んでやがるのかと思えば…なんだこれ、『俺を奪ってみせろ』?男同士の本じゃねえか。あれか。てめえ、腐男子ってやつなのか。」

大して興味もなさそうに本をめくる四天王寺から本を取り返そうと手を伸ばすとひょい、と届かない様に持ち上げられた。

小学生のガキか…

「興味があるなら持ち帰るがいい。」

めんどくさい事はごめんだ。大事な本ではあるが保存用にもう一冊持っているし取り合いのような真似をするくらいならくれてやる。
伸ばした手を引っ込めようとして、ぱしりとその手を四天王寺に掴まれた。

「…なんだ」
「興味があるもんは持ち帰ってもいいんだな?…ならお前を持ち帰る」


手を掴んだまま、にやりと悪い笑みを浮かべる男をきょとんとして見つめる。
何を言ってるんだこの男は。誰を持ち帰るだって?

口を開く前に四天王寺が立ち上がり隣に立ったかと思うとぐい、と掴んだ手を引っ張り晴彦を無理やり立たせ自分の胸に閉じ込めた。

「…なんのつもりだ」

眉間にしわを寄せて睨みつけるとさも楽しそうに笑いますます拘束を強くしてくる四天王寺に晴彦は怪訝な顔をした。

「言った通りだ。俺が興味があるのはお前だ。だからお前を持ち帰る」
「…趣味が悪いな」
「そうか?うまいもんはいつでも食えるがな、珍味となるとそうもいかねえだろう」

晴彦の顎に手をやり、持ち上げて晴彦が顔を逸らす間もなくその唇が四天王寺のものでふさがれた。



「…抵抗しねえんだな」

どれくらい経ったのか、もしかしたら一分くらいなのかもしれないが晴彦にはとても長く感じられた口付けが終わり、顔を離したところで四天王寺が晴彦に尋ねた。尋ねた、というよりは疑問をぶつけただけだろう。それもそうだ。つい昨日まで四天王寺のことをおざなりにしか扱わなかった晴彦がなされるがままに口付けをうけていたのだから。


無言で四天王寺を見つめる晴彦に何を勘違いしたのか四天王寺がその美しい顔ににやりと傲慢な笑みを浮かべ、晴彦の頬をそっと撫でた。


「俺の魅力にやっと気付いたか?賢い従順なやつは好きだぜ。何、痛くなんかしねえよ。



―――『大人しくいい子にしてな』」




もう一度、四天王寺が晴彦にキスをしようと顔を近づけたその時。



晴彦は自分の頬を撫でる四天王寺の手をぱしりと払い落とした。

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