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10

にっこりと、笑顔を浮かべながらこちらに近づいて来る高見沢。自分に向けられる甘い笑顔に、俺は思わず双眼鏡を持ってわたわたと屋上のフェンスの方を向く。

「こおら、旦那様に背中を向けちゃダメだろ?ハニー」
「や、やだわ、ダーリン。こんな所でハグだなんて恥ずかしい!」

背中を向けたら、高見沢が後ろからすっぽりと俺を包み込むように抱きしめて甘い言葉の冗談を吐く。余裕ぶって冗談を返すけど、ちゅ、とつむじにキスをされて真っ赤になってしまった。隣で羽曳野が
『溺愛攻めhshs!!』
なんてふんふん鼻息を荒げてガン見してくる。

やめてくれ!俺は人のBL的シチュは萌えても自分が萌え対象になるのは苦手なんだ!

「また晴彦んとこに来てたんだな。しょうがないってわかってるけどあんまりやきもち妬かせるなよ。」


ひいい!耳元で低い声でしゃべるのやめて!!助けを求めて晴彦の方を向いたら
『こっちを見るな下種が』
って言われるし、羽曳野はきゃあきゃあうるさいし。ああもう、なんだってんだ、勘弁してくれよ!



高見沢は、俺が晴彦の事を好きで、晴彦も俺の事を好きなんだと思っていたらしい。いつも二人でいて、晴彦といつも一緒にいるところを見てやきもちを妬いていたんだと言われた。

『今回の事で、ほんと俺、あいつにはぜってえかなわねえって思い知らされた。ほんとに、あいつのことはただの友達なんだよな…?』



もしかして、と思う場面が多々あったと。俺が晴彦の部屋に行ってしまって晴彦に俺に会うことを許可されなかった時には嫉妬と絶望で狂いそうになったと聞かされて泣きそうに笑う高見沢をぎゅっと抱きしめた。


今は晴彦は俺にとってどんな存在であるかがわかったから、晴彦にとっても俺はどの位置にいるかがわかっているからこうして晴彦と二人きりでいることも許してくれる。

…まあ、高確率で羽曳野と高見沢が現れるんだけども。


それから、腐男子であることが高見沢にばれてしまってから、もう一つ困ることがある。それは、

「またカップルを覗き見してたのか?今日はどんなカップルだった?何をしてた?」
「な、何も見てない!してない!」
「その下にいる不良とちびっこだ。不良がちびっこに無理やりキスしてたぞ」

高見沢に聞かれて、ぶんぶん首を振ったのにもかかわらず晴彦がさらりと暴露する。晴彦ちゃん!どうして黙っててくんないの!

「そうか、今日は強引なのがお好みなんだな?じゃあお望み通りやってやるよ…」
「ち、ちが…っ、んン――――――!」

にやりと笑うと同時に、片手で顎を掴まれて無理やり上を向かされてキスをされる。
困ることってのはこれだ。俺がBLウォッチングをしていると、その萌えたカプのシチュをそのまま俺にするのだ。しかも、誰の前であろうともお構いなし。むしろ自分が俺をどれだけ愛してるかを見せつけてやるとか言って余計にしてくる。
俺はもう、これが恥ずかしくて恥ずかしくて仕方がない。だって、どんなことでもやろうとしてくれるんだもの!

隣では晴彦が我関せずと本に目を落とし、羽曳野はきゃあきゃあとうるさく騒ぐ。ばしばしと高見沢の背中を叩くと、ようやく解放されてげほげほとむせる。

「たか、み…っ、の、ばかぁ…っ!」

酸欠で潤んだ目で真っ赤な顔をして恨み言を投げつけるが、高見沢はにこにこと超笑顔でちゅっとついばむようなキスをした。

「そんな顔でそんなかわいい事言って、俺を煽ってんだな。イケない子にはお仕置きだなあ、…ちさと?」
「ひゃん…!」

耳をべろりと舐められて思わず上ずった変な声が出る。

「溺愛鬼畜お仕置き宣言キタ―――――!!」

羽曳野がさらに何だか大変なことになってるが、気持ち悪いので見ないことにした。
真っ赤になっておどおどと目をさまよわせる俺をひょい、と軽く抱き上げてスタスタと扉に向かって歩き出す。ちょ、晴彦ちゃん!無表情に手を振るのやめて!助けて!羽曳野、携帯かまえてんじゃねえ!


「愛してるぜ、千里。言ったろ?お前の望むことは、なんでも叶えてやるってな。」
「う…」


そう言う意味じゃ、なかったんだけどなあ。
そう思いながらも、高見沢のその一言で俺は天国にいるように幸せな気持ちになる。

ああ、もう仕方ない。だって、腐男子だって男の子。



好きな人にそんなことを言われて、萌えないわけがないもんね。



「俺も…、愛してる。」


高見沢の首にぎゅっと抱き着いてそう言えば、嬉しそうに顔を緩ませる高見沢と目が合った。


明日も、明後日も、そのまた次の日も。俺の極上の萌えは、ここにある。





腐男子だって、恋をする。



――――完

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