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9

「うおお!ビビりチワワちゃんが意地悪不良くんに無理やりチュウされてる!hshs!」
「だまれ」
「ぎゃん!」


屋上で双眼鏡を覗きながら寝転んで足をじたばたさせると、隣で本を読んでいた晴彦がハードカバーの本で俺の頭をはたいた。ちょっとひどいじゃないの!メガネが割れたらどうすんのよ晴彦ちゃん!

「俺の読書をじゃまするから悪い」

ですよねー。

反論したら今度こそ眼鏡ごと双眼鏡を割られそうなので大人しく謝罪を口にして再び双眼鏡を覗きこむ。
あ、チワワちゃんが泣いちゃって不良くんおろおろしてる。強引ヘタレ攻めか、なかなか新しいな。

「お前、こんなとこにいてもいいのか」
「へ?なんで?」

きょとんとして聞き直すと晴彦が心底バカにして蔑んだ目をしてくる。え、俺たち友達だったよね?

「お前の愛しのたかみんのそばにいてバカ丸出しでいちゃこらちゅっちゅしてなくていいのかって言ってんだ」
「なっ…、は、晴彦ちゃん!下品!」

真っ赤になってわたわたすると、晴彦に
『キモイ』
と一蹴された。相変わらず辛辣。


高見沢と晴れて恋人同士となった次の日、晴彦の部屋に荷物を取りに行くと俺の荷物が全てゴミ袋に詰められていた。


『俺の部屋には要らないゴミだからこの扱いで十分だろうが。』


ひどいわ晴彦ちゃん!


…でも、俺は知っている。それは、晴彦の遠回しの激励なんだと。
二度と戻ってくるような事態にならないことを願ってくれている。俺の荷物が、晴彦の部屋で『要るもの』にならないようにと言う意味を込めて、敢えてゴミだと言っているんだ。


『安心しろ、分別はしておいてやったからな』


…と、信じたい。


晴彦は、俺と高見沢の事を何も聞かなかった。お礼を言ったら、キモイと言われた。そう言いながら薄く笑った晴彦を見て、泣いたら今度は汚いって言われたけど。

晴彦には、感謝してもしきれない。こいつがいてくれて、本当によかったと心から思う。晴彦は俺の中で別シード。

だからこそ、

「べ、別に、俺、お前といるの、たのしーもん。高見沢以外に、唯一一緒にいたいって思う相手だし、だからお前といたいときもあるわけで…」


正直に自分の気持ちを言うと、晴彦がうっとおしそうにため息をついた。


「…鈍感」
「そうだよおおおおおお!無自覚タラシだよオオオオオオ!!」
「わーーーー!!」

晴彦が呟くと同時に、大声で叫びながら俺たちの前に転がり飛んで出てきた男にびっくりして飛びずさる。
鼻息荒い!怖いよ!

「いつからいたんだよ、羽曳野!」
「え?さっきからずっと覗かせていただきましたァん!もう!だめでしょちーちゃん!晴彦君に迫っちゃったりして高見沢君に嫉妬させてお仕置きしてもらっちゃうつもり?はっ!まさか、晴彦君と高見沢君でちーちゃんの取り合い3Pご希望!?」
「するか!!」


俺の前で、両頬に手を当ててくねくねと体を捩らせる羽曳野にげんなりとする。


実は、羽曳野にもあの後に会いに行った。きちんと話をして、高見沢とのことを伝えるために。俺、羽曳野にもきちんとお礼を言いたかったから。まさか羽曳野が、自分がやったと暴露するだなんて思ってもみなかったんだ。

羽曳野には一人で会いに行った。羽曳野が、俺の事をめいっぱいなじっても大丈夫なように誰にもばれない所で二人で会おうって決めてたんだ。認めてはくれたものの、やっぱり悔しかったり、恨んでたりってのもちょっとはあるんじゃないかって思ったから、好きなだけ何でも俺に言えるように。

ところが、羽曳野は俺を責めるどころか涙を流して俺に謝罪をしてきた。こいつ、なんていいやつなんだろうかとじんとした。その後。
そこで予想外の出来事が起きた。



「僕、もう自分を偽るのはやめるよ!君を見てたら、勇気がわいてきた!だから、もう腐男子なのは隠さない。君みたいに、本当の自分を見てくれる人を探す!そして…、

君と高見沢君で、萌えを補給させてもらうよ!!!!」
「やめれ!!」



なんと、まさかの腐男子カミングアウトを決めたと言い、いっそ清々しいくらいの笑顔で親指を立てた。
そして、本当に次の日には全校生徒に自分が腐男子であることを告白。


…あの事件のことは、絶対に言うなと言ったのに、本当は自分がやったのだとそれまで暴露してしまった。だけど、羽曳野に対して冷たい態度や罵倒を浴びせるやつは一人もいなかった。

「ちーちゃんが、自分を犠牲にしてまで僕と高見沢君の為に動いていたってことを知って、ちーちゃんが悪者だって皆でいじめみたいなことをした事が恥ずかしくなったんだと思うよ。」

ちーちゃんのおかげで、僕もちゃんと自分がした悪い事を皆に言えたんだ。

そう言われて、泣きそうになった。

羽曳野は、俺のことは恨んだりなんてちっともしていないと言った。悔しい思いはあるけれど、それは高見沢を取られたとかいう悔しさなんかじゃない。




「ちーちゃんをこんなかわいい子だなんて見抜けなかった自分がくやしいよ。」
「かわいい言うな。あとちーちゃん言うのもやめれ。」

びしりと羽曳野にチョップをくらわすと、羽曳野は頭を押さえながら泣き真似をした。

うん、見た目が抜群にかわいいから俺がいじめっ子みたいじゃないか。

「ちーちゃんはかわいいよぉ。一途でしょ、健気でしょ、それから照れ屋さんでしょ。高見沢くんにかまってもらいたいとき、すっごいウサギちゃんみたいなんだよ。知ってた?」


「ああ、知ってるよ」


こてん、とかわいらしく首を傾げた羽曳野の言葉に反論しようとした時、聞き慣れた甘い低音ボイスが聞こえた。

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