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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -




3

羽曳野は、泣きながら全てを暴露した。自分が腐男子であること。高見沢が好きで、BL本をお手本にしたこと。千里に見つかり、口止めをしたこと。

「や、安田くんが、計画したんじゃ、ないの。ぼく、僕が、BL本の通りに、高見沢くんを落とそうとしたの!安田くんは、言ったんだ。『絶対に、それを手本にして高見沢を落とそうとしたとか、言わないでくれ』って…。」

まさか、バレた時に自分がやっただなんて言い出すとは思わなかったのだ。初めこそ偽善者、と蔑んだものの、噂があっという間に広まり千里がいじめらしきものを受けていると聞いた。
周りの皆は、千里の言葉を鵜呑みにして自分のことを魔女に操られたかわいそうなお姫様として扱い、高見沢とのことを応援してくる。

ほんの少しの罪悪感はあったものの、高見沢が好きな羽曳野は真実を飲み込んで噂を利用しようとした。

だけど、千里が学校に来なくなって。高見沢のどんどん憔悴していく姿を見て、思い出すのは千里の取った行動だった。

羽曳野は千里を自分に置き換えてみた。



自分は、高見沢が好きだ。



高見沢を手に入れる為には、どんな卑怯な手だって使うつもりだった。実際、その通りに事は進んだ。千里が悪者になったことにより、周りの皆が高見沢と自分こそが付き合うのにふさわしい。お似合いのカップルだとそう言った。自分もそう思っていた。千里が、ズタボロの教科書やたくさんのゲイ本を持ち、凛として廊下を歩くその姿を見るまでは。



千里は違う。



千里も、高見沢が好きだ。


そして、その好きな高見沢のためなら自分が悪になることすら躊躇しなかった。周りからどれほどの非難を受けることになろうとも、高見沢のために自分が犠牲になることを厭わなかった。



自分とは、違う。



千里と自分を置き換えた時、同じ行動ができるか。答えは否だった。



それに気づいた時、羽曳野は初めて千里に対する罪悪感に胸がつぶれそうになった。


何度も本当のことを言おうとしたけれど、自分が蔑まれる立場になったことのない羽曳野は怖くて今まで言えなかったのだと、嗚咽をもらしながら何度も何度も高見沢に謝った。



羽曳野の話を全て聞いた高見沢は同じく胸がつぶされそうだった。

自分は千里のなにを見ていたのか。まだ自分の気持ちに気づく事のなかった時、友人として一番そばにいながら千里の姿をどう捕らえていたのか。
晴彦に叱責されるのも当然だ。自分は、何も見えていなかった。自分の気持ちだけで千里を責め、自分だけが傷つけられた気でいた。


一番、心に傷を負ったのは誰なのか。


「…お前だけが、悪いんじゃない。羽曳野…ごめん。」
「だ、がみざわ、く…」


誰もが自分の事だけを考える中、千里だけがただ一人人の幸せを願った。
それを知った高見沢は、改めて千里への想いを募らせた。

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