×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -




2

カーテンを開けると、先ほどまで雲に隠れていた月が顔を出していた。夜空に凛と輝く満月は、答えを出した高見沢の心を表しているようだった。



次の日、高見沢はいつものように羽曳野の教室まで行くと、周りの皆が羽曳野に『王子様がきたよ〜』などとちゃかしたが、それを言われる度羽曳野はなんだか苦笑いをしているようにみえた。

「ちょっと、来てくれないか?」

二人をはやし立てる声を浴びながら高見沢は羽曳野の手を引き、中庭まで連れてきた。



曖昧だったこの関係に終止符を打つつもりで。



「高見沢君、どうしたの?こんな所まで連れ出して…」

どこか不安そうに眉を寄せる羽曳野に、罪悪感がないと言えば嘘になる。羽曳野には、はっきりと告白されたわけではない。だが、その態度や仕草などで、自分に多少なりの好意を持っていたのは明らかで自分も羽曳野に対してそうであろうかのような態度をしていたのだ。
つまり高見沢は、相手の気持ちを知りながらそれを利用したに過ぎない。
決して許されるべきことではないその卑怯な行為を、羽曳野に罵倒されようが殴られようが、謝罪をしなければならない。そして、はっきりと伝えよう。

高見沢は羽曳野に向かい合うと、がばりと頭を下げた。

「…ごめん。俺は、お前を利用した。本当にすまない。最低だと思う。…でも、もう嘘はつけない。俺、安田が好きだ。」
「…」

頭を下げたまま、謝罪と己の本当に思う相手の名を告げる高見沢に羽曳野は何も言わなかった。ただただ静寂が辺りを包み、遠くで生徒たちの笑い声が聞こえる。

「…そんなに、好き…?」

どれくらいたったのだろうか。羽曳野がぽつりと消え入りそうな声で呟く。それに高見沢は顔を上げて、しっかりと羽曳野を見据えた。

「…好きだ。」
「あんなこと、されても?」
「あいつの事は言えない。俺はもっとひどい事をした。あいつに責められこそすれ俺が責める権利何てない」

高見沢がきっぱりと言い切ると、途端に羽曳野の両目からぼろぼろと大粒の涙が零れ落ちた。高見沢は、その涙に胸がひどく傷む。だが、いくら泣かせてしまったとしても自分の気持ちを偽ることなどできない。高見沢が、改めて謝罪を口にしようとした瞬間、

「ごめ…っ、ごめ、な、さい…!ごべんなざいいいいいい〜…」

羽曳野が、ワンワンと大声で泣きながら謝罪を口にした。

[ 32/81 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]

top