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腐男子です。

「ああ〜、かわいこちゃんが玉砕…」



草むらの陰からそっとかわいこちゃんの告白をウォッチングしていた俺は隠れながらも盛大なため息をついた。
かわいこちゃんが走り去る後、バレないようにこっそりその場を後にする。


「何だよ高見沢のやつ!これで何人目だってんだ、いい加減一回くらいOK出してみろってんだ!そして同室者の俺に生BLもとい生Bエロを堪能させやがれ!」
「はいはい、わかったから俺の京也様殴らないでくれる?」


バスバスとベッドの上で抱き枕を殴る俺を冷ややかな目で見つめるのは野原晴彦(のはらはるひこ)。俺の親友だ。
俺は安田千里(やすだちさと)、17才。ちょっと背の低めの凡庸な顔立ちをした男子高校生。そこらへんにいるはっきり言ってモブに埋もれる平凡中の平凡。

だがしかし、とある一点において平凡ではない。先の叫びでわかるように俺はいわゆる腐男子だ。ねーちゃんの部屋である日見つけた一冊の本。それが俺の運命を変えた一冊。

美形同士が絡み合うそれに脳みその端っこの方がスパーキン!

ものの見事に禁断の世界の虜となった。そのうち二次元で我慢できなくなった俺は現実の世界での生BLを見たくなった。とはいえ普通の学校でそんなもんにそうそう巡り会えるはずもない。そこで俺は腐の師匠であるねーちゃんに相談。ねーちゃんは己の腐れネットワークの全てを駆使してこの全寮制の学校を調べだしてくれた。

小中高一貫、完全隔離されたこの学校はそれこそ腐男子にとって夢のような世界。エリートばかり集まるこの学校は、レベルが遥かに高かったけど元々頭だけはよかった俺は外部試験で見事学力特待を取った。金がいっさいかからん俺を親は喜んで送り出してくれたさ。ほんとの思惑なんざ全く知らずに。
一番喜んだのはねーちゃんだけど。

ねーちゃんの調べたこの学校はそれはもう半端なかった。同性愛なんざ当たり前、そんじょそこらでまるでドラマでも見ているかのように男同士がいちゃこらしてるのだ!
そんでもってだ。この学校の美形率の高いこと高い事!え、面接で顔試験でもあるんですかってくらい色んなタイプの美形がそろっている。そんで親衛隊なんかもあったりするからもう俺は花のBLライフをウハウハ満喫しているのさ!

俺を先ほど冷ややかな視線で射抜き殺した晴彦とはここで知り合った腐男子仲間だ。晴彦はBLゲームですっころんだそうで、ゲームキャラの『京也様』という俺様キャラにぞっこんラブなのだ。
そんな晴彦のぞっこんラブな大事なダーリンの抱き枕を再び殴って今度は俺が晴彦に殴られた。いてえ。


そんで、さっきの話。

俺の同室者の高見沢春樹(たかみざわはるき)。こいつが、今一年生、いや、学園で人気ナンバー1の超美形な男。めっさモテモテ、親衛隊の規模も学園ナンバー1だ。初めて同室になって挨拶をした時、俺はビビっときたね!こいつは、俺に今まで経験したことのないほどの脳みそが痺れる萌えをくれる…!ってな!

俺はいつ素敵な萌えが繰り広げられるんだろうかとどきどきわくわくしながらカメラを構えて待っていた。

だが、ここで何と大誤算!


高見沢は、ノンケだったのだあああああ!!!



「どうよ晴彦ちゃん!これってどうよ!」
「知るか」

京也様以外に興味がない晴彦はズバッと俺の嘆きを一蹴する。うう、ひどい。こいつ、京也様に少しでも似てるかそのゲームのルートに近いBLにしか興味ないんだもんなあ…。冷たい。


「くっそー、俺の直感当たるのになあ…」
「高見沢以外にも萌えなんてそこらじゅうに転がってるだろうが」
「たかみんがいいの!」

そう。なぜだろうか、俺の直感が俺の体全てに訴えるのだ。こいつじゃないとって。だがしかし、そんな俺の直感をあざ笑うがごとく高見沢は告白に来る全てのかわい子ちゃんを無下に断るのだ。

「なあ、どうしたら高見沢は俺に萌えを提供してくれると思う?」
「俺は腐男子でお前とかわい子ちゃんのセックスを生で見てハスハスしたいのでよろしくお願いしますって言ってみたら」
「あほか!」


なんて下品なこと言うの晴彦ちゃんたら!

「あ〜あ…。しょうがないから裏庭にでも行ってラブいカプのいちゃこらでも見てくるかあ。」
「おう、いけいけ。そんでついでにコンビニ行ってコーラ買ってこい」

もう、晴彦ちゃんたら!人使い荒いんだから!ぶつくさ文句を言いながらも俺は小銭を握りしめて晴彦の部屋を後にした。うん、俺って健気。うふ。

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