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4

見間違いかもしれない。俺の写真に見えたあれは、羽曳野と撮ったものななのかも。うん、そうだ。そうに違いない。
記憶を無理矢理ねじまげて、見間違いだったと結論づける。

中庭から戻り、特別室まで送ってくれた晴彦に別れを告げて1人だけの席に着く。

次の授業の用意のために机から教科書を出して、はらりと何かが落ちたのに気がついた。

「…?」

それは小さなメモ用紙で、なんか書いたっけ?と疑問に思いながら拾い上げる。

「え…?」



『体はもう大丈夫か?まだ夜は急に冷えたりするからな、また風邪なんか引かないようにちゃんと布団被って寝ろよ。』


気持ち悪い、とかはなかった。端から見るとまるでストーカーのような文章だけど、俺はそうは思わなかった。

純粋に俺のことを気遣ってくれているような、優しさにあふれているような気がした。



だって。だって、これは。



そう思いたい。でも、違うかもしれない。
思い浮かんだ可能性を無理やりかき消す。拾ったメモは、そっと手帳に挟み込んだ。


次の日、晴彦がまたBLウオッチングに誘ってきた。昨日のことが頭から離れなくて断ろうとしたけど笑顔で誘いをかける晴彦の後ろが真っ黒だったから立ち上がりましたとも。晴彦と一緒に中庭を歩きながらも、俺はそこかしこにあるベンチに気が行ってしまってBLウオッチングどころじゃない。
若干挙動不審になりながらもついて行くと、晴彦が少し先の木陰に見たいカップルがいるけど狭いからお前はどっかで違うもん見てこいと猫でも追い払うかのようにしっし、とされた。ひどいわ晴彦ちゃん。放置プレイなんて泣いちゃうわよ!

とはいえ、仕事のために一生懸命な晴彦の邪魔をするわけにもいかないので俺は違うところに行くことにした。誰かに会うと怖いので、木陰を忍者のように移動しながらだけど。いろんなカプを盗み見しつつ少し先に進むと、向かい合って立っているカプがいた。いや、カプじゃないな。雰囲気からして告白か。


「高見沢君、好きです!」


…お前かあああああ!!

聞こえてきた名前にその場に四つん這いになってがくりと項垂れる。ああ、俺ってなんて運が悪いんだろうか。顔を上げると、かわい子ちゃんの真っ赤になった顔と、高見沢のナナメ後姿。見たくなくて、こっそり去ろうとしたその時。

「ごめん、好きな子がいるから付き合えない。」
「そ、それって、やっぱり羽曳野くんですか…?」

断られたかわい子ちゃんが涙をためて問い詰める。うわ、聞きたくない!やっぱり来るんじゃなかった、早く晴彦んとこに帰ろう!
そう思って四つん這いのままくるりと向きを変えた。


「違うよ。羽曳野じゃない。ここに入ってから、ずっとそばにいたんだけど俺が情けない奴だから傷つけて、離れられちゃって…。これから、取り戻そうと思ってるんだ。」

…羽曳野じゃ、ない…?

四つん這いで逃げ出そうとした格好のまま顔だけ振り返ると、告白したかわい子ちゃんが頭を下げて去るところだった。思わず、一人残された高見沢をじっと見る。

ずっとそばにいた?離れられちゃった?

一体誰の事を、と思ったとき、また高見沢はポケットから写真を一枚取り出して…そこに口づけた。


「…会いたいよ。」


写真を胸に抱き、その場を高見沢が立ち去る瞬間、チャラ、という音に引かれ音源に目をやる。歩き出した高見沢の、後ろポケットから出ている携帯のストラップ。ついていたものに目を奪われた俺は、高見沢がいなくなるまで身動き一つとれなかった。

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