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3

久しぶりに歩く中庭は、何だかすごく広く感じた。ここは公園のように所々ベンチが設置してあり、かっこうのデートスポットになっているのでいちゃいちゃらぶらぶなカップルを多々見かける。
普通に散歩しているだけで今でもベンチに座るカプは五組目だ。肩寄せ合って時にはちゅっちゅして。



久しぶりに、萌えた。



「うは!あのカプ、受け君超恥ずかしがってる!おおお!あっちはご機嫌損ねたのかな、ほっぺ膨らましてる受け君とへのじ眉で宥める攻め君超萌え!」

色々見てるうちに以前のように腐男子魂がくすぐられてhshs。

「もう少し奥に行くか」

晴彦に連れられて中庭の少し奥へ。途中晴彦が立ち止まり、『メールが来たからちょっとまて』と携帯を取り出していじりだした。晴彦が操作する間、なんとなくあたりを見回す。
瞬間、ドキンと心臓が高鳴る。
左側に、こちらに背を向ける形でセットされているベンチ。見慣れた後ろ姿。




―――――高見沢。




久しぶりに見るその姿に、後ろ姿なのにかっこいいなあとか思う。今日は一人なんだ。羽曳野とは別行動とか珍しいな。

後ろ姿とは言ったが全くの真後ろではなく、ややななめに位置しているので少し顔をひねるとこちらが視界に入るだろう。急に振り返られたりしたらどうしようか。隠れなきゃ、と思うのに目が離せない。どっどっどっと心臓がいつにない動きで血液を送り出す。
目を逸らせないでじっと見ていると、高見沢はなにやらポケットから一枚の紙を取り出した。

いや、紙じゃない。あれは、写真…?

そんなに離れていない距離なので、高見沢の持つ写真が俺からだとばっちり見える。その写真を見て、俺は思わず声を上げそうになった。


高見沢が見ていたのは、俺と二人で写った写真だったのだ。



あれはたしか、同室一か月記念!とかなんとか言って冗談で二人肩を組んで撮ったおふざけの一枚だ。出来上がった写真を二人で一枚ずつ持って、

『生徒手帳に入れておくよハニー』
『私もよ、時々ちゅうしちゃう』

とかなんとか冗談を言い合ってたっけ。
まだ、持ってたんだ。俺のことに幻滅してとっくに捨てたんだとばかり思ってたのに。高見沢が写真を持っていてくれたということが嬉しくてちょっと泣きそうになる。あ、でも、破るために取りだしたとかだったらどうしよう…とか思った次の瞬間。


「…!?」


高見沢は、その写真に口づけた。


唇を離した後、もう一度じっと写真を見つめている。そして、写真を胸に抱いて少し項垂れた。それからゆっくりとベンチから立ち上がって、こちらに顔を向けることなく高見沢は行ってしまった。

高見沢が去るまでの数秒、いや、数分かも知れないが俺にとっては時が止まったように感じた。


なんで。どうして。


晴彦が携帯を閉じて俺に先を促す。その後は何を見たのか、何をしゃべったのか全く記憶にない。ただただ、先ほどの高見沢の行動がまるで壊れたプレーヤーのように何度も何度も頭で再生されていた。

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