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5

「…いるが、それがどうした」


ひどく冷たい目で高見沢を睨みながら晴彦が問う。高見沢は晴彦の目に一瞬息をのみ言葉を濁したが、少し目を泳がせて再び口を開いた。

「…会いたい、んだけど…」
「会ってどうする。何を話す。お前、自分が千里に何を言ったかわかってるのか?千里に何をされたと言って千里を責めたのか覚えてないのか?」

わざと教室での出来事を揶揄してやると高見沢は更に辛そうに眉をしかめた。

「あ、あれはっ…」
「言っとくがな。俺はお前がだいっきらいだ」

ぎり、と親の敵でも見るかのように睨まれ、高見沢は驚愕に目を見開いた。晴彦とは話した事も無い。羽曳野と同じクラスで、安田と仲がいいくらいしか知らない。なのになぜこんなにはっきりと自分の事を嫌うのか。高見沢はもしかして、とは思うものの断定されるのが怖くて何も言えずにいた。
晴彦も高見沢も、お互いなにも言わないまま、視線を逸らさない。
しばらくして、晴彦が口を開いた。


「人の心をもてあそぶような人間が嫌いなんだってな?じゃあお前がしたことはどうなんだ。
羽曳野と共に行動したり、羽曳野といかにもデキているような素振りを見せたり。それが何のためかなんて気付かれないとでも思ってたのか?腐男子を舐めるなよ。普段から人を観察してるんだ、お前がどうなのかなんてお見通しなんだよ。」

晴彦の口から出た言葉に、高見沢は驚きのあまり言葉を発することができないでいた。

「人の気持ちを操ろうとしたのはお前だって一緒だろうが。千里のことを責める権利がどこにある。
――――――千里が好きなくせに、自分から言い出すこともできずに嫉妬させようとしたり気を惹こうとしたお前の行動はお前が嫌う腐男子とどこが違うって言うんだ。お前が羽曳野の事を好きならばと、お互い両想いならばと行動した千里よりも千里を試すような真似をしたお前の行動の方がよっぽど最低じゃねえか!」


『千里が好きなくせに』


高見沢は今度こそ本当に何も言えなくなってしまった。いや、何か言おうとはした。だが、思いとは裏腹に口から全く言葉が出てきてくれない。高見沢を睨む晴彦の目に自分の醜い部分全てをさらけ出されるようで正視できずに唇を噛んで俯く。

「千里がてめえの傍から離れるようなことになったのはてめえの自業自得だ。千里は俺が預かる限りてめえには絶対に会わせねえ。わかったら帰れ。話は終わりだ」
「待っ…!」

待ってくれ、と言葉にするよりも早く晴彦がばたんと目の前の扉を閉める。高見沢は閉じられた扉に拳と額をつけ、唇を噛むしかできなかった。




閉め切った扉を背に晴彦が拳を握りしめる。

「…自業自得だ。」

高見沢が、千里のことで苦しむのも。自分が今こうして千里への罪悪感で苦しむのも。





千里が、高見沢の気持ちに気付かず今こうして苦しんでいるのも。


みんなみんな、自業自得だ。

何の物なのかはわからない。晴彦の頬にはいつの間にか涙が一筋伝っていた。

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