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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -




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目を覚ますと、目の前にニヒルな笑いを浮かべるクールな美形が!と思ったら京也様だった。そうだ、晴彦の部屋に転がり込んだんだっけ。ぼんやりする頭を押さえながらベッドから起き上がると、丁度晴彦が様子を見に来ようとしてくれていたのか扉を開けて入って来た。

「起きたか。大丈夫か?」
「うん…。今何時?」
「夜の八時だ。腹減っただろ、飯作ったから食え」

晴彦に言われてのそのそと起き上がり、リビングへ向かうとテーブルの上にはおいしそうなおかずがたくさんならんでいた。どれも、俺の好物ばかりだ。
促されて席に着くと、晴彦が温かいみそ汁とご飯をよそってくれた。

「頂きます」

両手を合わせて挨拶をして、味噌汁を一口飲む。おおう、晴彦ちゃん。超美味いよ。

じわりとお腹に広がる温かさにほっと溜息を一つ吐いてじっとお椀を見つめる。わかめと玉ねぎの味噌汁だ。

『てめえ、味噌汁に玉ネギとかやめろよ!』

高見沢は玉ねぎが嫌いで、俺が味噌汁にいれるといつも怒ってたっけ。楽しかった食卓を思い出してじわりと涙腺が緩む。涙がこぼれそうになって、あわててごまかすために味噌汁椀に口を付けた。

晴彦は何も言わず、何も聞かず至って普通にいつものように接してくれた。片づけが終わり全てがすんで夜も更けたころ、さすがにベッドをまた借りるのは悪いのでソファを貸してくれというとあほう、と頭をはたかれた。

「首席なめんな。俺の寝室には簡易ベッドがあるんだよ。」

そう言って寝室に行くと、なんとベッドの下からまたベッドが現れた。うそん、なにこれ。俺の部屋こんな多機能ベッドじゃねえ。ただのパイプベッドですけど。

「一緒にするなよ平凡が」

晴彦ちゃんヒドイ!今の世の中平凡受けが流行ってるんだからね!
それに俺だって一応特待なんだから!顔は平凡だけど!

ぶつぶついいながら晴彦の用意してくれたベッドに潜り込むと、上から何か投げられた。あらやだ、俺がさっきまでしがみついてた京也様抱き枕じゃない。

「特別に貸してやる。だが涎なんかつけてみろ。わかってるだろうな。」

そう言って背中を向けて晴彦はベッドに潜り込んでしまった。え、なにそれ怖い。貸してほしくないんですけど。

そう思いつつも、しぶしぶ枕にしがみつき、ぎゅう、と抱き枕に顔を埋めて眠る。
夢の中で高見沢はいつもと変わらず笑ってて。夢の中だと言うのに俺は高見沢が変わらない笑顔を向けてくれたことに嬉しくて泣いた。

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