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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -




2

次の日の朝、高見沢は朝ごはんも羽曳野と一緒に食べる約束をしたらしく顔も見ないで部屋を出て行った。一人で食べる朝ごはんは何だか味気ない。部屋だって、こんなに静かだったっけとひどく殺風景に感じる。

「ごちそうさま」

返事が返ってくるわけでもないのに、そこにいるわけでもないのに俺はいつも高見沢が座っている椅子の方へ向かって手を合わせて頭を下げた。

学校につくとそれはそれはハチの巣をつついたような大騒ぎだった。それもそうだ。ただ今現在進行形で俺の目の前には向かい合っていちゃこらしている高見沢と羽曳野がいるんだもの。まあ、いちゃこらっていうか話してるだけなんだけど、今までよりもなんだか顔の距離が近い。羽曳野に至っては『好きです〜!』ってオーラバンバンに出して顔だってほんのりピンク色。高見沢も見たことないような甘い顔で笑って、あらあら時々ほっぺなんか撫でたりしちゃったりして。

お前らクラスメイトを胸焼けで殺すつもりかってくらいに甘ったるい雰囲気をまき散らすのはやめてくれ。

周りの皆は悔しそうに唇を噛むもの、うらやましそうに指をくわえるもの、さまざまだ。それもそうか。二人とも、学園のアイドルなんだもの。

うん、お似合いだよ。



高見沢。羽曳野は腐男子だけど、いつかそんなのがバレても『お前ならなんでもいいよ』ってそんなのが気にならないくらい好きになって幸せになってくれ。



俺はなるべく二人の姿が目に入らない様に俯いて授業の用意をした。
そんな俺を、高見沢がちらちらと見ていたなんて全く気付くこともなかった。




放課後、ぐでんと自分の机に伏せてうだうだと時間を潰す。周りの奴らはこの後遊びに行くとかクラブがどうのとか、わいわいと騒がしいけど俺はそれをどこか遠くの音のように聞いていた。

早く帰る用意でもしなきゃ、とか別のことを考えようとしても、頭に浮かぶのは高見沢と羽曳野のこと。

ああ、いつもなら『生BLキタコレ!』と萌え萌えするのに。

何にも見る気が起きない。会計とか副会長とか、バスケ部のマネージャーとか。この学園には俺の命の源である萌えがたらふく溢れているというのに。



…そう。美形だって優しいやつだって、この学園には山ほど溢れているというのに。



どうして。どうして羽曳野は高見沢を選んだんだろう。どうして高見沢じゃないとだめなんだろう。

「お、高見沢!また羽曳野の所かよ?さすがラブラブだな〜」
「ばっか、そんなんじゃねえって」

顔を上げずに会話だけ耳で拾う。そっか。放課後だもんな。高見沢は羽曳野と仲良く帰るために教室まで迎えに行ってんだよな。


…迎えに行く。


そこまで考えて、俺はふと違和感を感じた。なにかおかしい。そうだ。晴彦。
おれ、あいつの事今日一回も見てない。いつもなら俺のところに一日一回は来てたのに。



『ぜってえ許さねえ』



晴彦の言葉が頭の中でぐるぐる回る。ものすごく嫌な予感がして、俺は教室を出て行った高見沢の後を追った。

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