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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -




3

「うぜえ」
「ひどい!」


床にうずくまる俺の頭に、容赦なく雑誌を投げつけるのはご存知晴彦だ。あんなに避けてたのになんで俺がここにいるのかだって?しょうがないじゃん。捕まっちゃったんだもん!

羽曳野との話の後、茫然と床に座り込んでいたらなんと晴彦が現れた。ずっと探し回っていたらしい。扉を開けて俺を見た晴彦は一瞬般若のようなお顔をしたけど俺の顔を見てすぐに何も言わずに腕を引き(歩くのに痛そうにしてたらおんぶしてくれた。晴彦ちゃん優しくてキモイ。)寮に連れ帰り、コーヒーを出してくれた。

そんで、俺の話を聞いた晴彦ちゃんのご感想の第一声が先ほどのものでございます。

「ちっ…、こうなる前に手を打つつもりだったのによ」
「え?」
「なんでもねえ。んで、どうすんだ。このまま大人しく高見沢が落ちんの見てんのか」

ギロリと睨まれ、うっと詰まる。

「…見てる」
「は?」

晴彦ちゃん、『は?』の時お顔が般若どころの騒ぎじゃないよ!かっこいいお顔が台無しだったよ!

「…見てる、しかないじゃないか。だって、俺、何も言えない。何て言えばいいのかわかんない。だって、だって…、」


俯いて膝の上で拳をぎゅっと握りしめる。


「…高見沢は、羽曳野に、惹かれてんだ。…ううん。もう、好きなのかもしんない。それなのに、俺、『あいつはお前を本の通りに落とそうとしてるんだ』なんて言えねえよ…。」

高見沢は、羽曳野の事を『ほっとけない』と言った。その時の笑った顔。あんな顔、俺、見たことない。きっと、高見沢は今あんなに嫌がってた男同士の恋愛をトラウマを乗り越えて始めようとしてる。そんな高見沢に、羽曳野が実は腐男子で本の通りに行動してお前の心を惹きつけたんだなんて誰が言える?

羽曳野は、ネタとしてじゃなく高見沢の事をちゃんと好きだと言ってた。好きだからこそ、どんな手を使ってでも自分に振り向いてもらいたいから本をマニュアルにしただけだって。BLは言わば俺ら腐男子のバイブルみたいなもんだ。羽曳野は自分が男たちにどんな目で見られるのかをよくわかってる。そして、高見沢みたいなタイプが人一倍優しくて責任感が強いってことも。そんな奴にどんな態度を取ったら庇護欲をそそらせることができるか。それをより効果的にするためにBLをお手本にしたんだろう。

確かに、BLはファンタジーでもあるけれど、実際そんなことがあるのかってくらい夢みたいな話だけど。羽曳野の様な男の子を高見沢みたいな男は好きになる。それは現実の世界だって同じ。人の心はそんなに簡単なもんじゃないかもしれない。だけど、可能性がないわけじゃない。それをお手本にして何が悪いって。


確かに始め方は悪いかもしれない。でも、羽曳野はそれだけ高見沢に好きになってもらいたいんだって思ったんだ。

「羽曳野は、本の通りにやったって絶対言わないって約束…って、いだいいだいいだい!!」
「てめえは…!ほんっとにばか野郎だ…!てめえだけじゃねえ、高見沢もな!」

黙って聞いていた晴彦がずかずかと俺に近づいたかと思うと、思い切り俺のほっぺたをつまんで引っ張った。超痛いんだけど!それになに!?俺がバカなのは認めるけど、何で高見沢まで!?

晴彦が俺の頬からやっと手を離してくれた頃には俺のほっぺは真っ赤になっていた。ひどい、晴彦ちゃん。

「俺は認めねえぞ。あの野郎、ぜってえ許さねえからな…!」

そう言ってどこかを睨みつける晴彦は本当に怖かった。なに、何しようとしてんの晴彦ちゃん。おどおど怯えて晴彦を見上げると、

「てめえも許さねえ!無自覚一途も度が過ぎるとムカつくんだよ!」
「ぎゃん!」

そう言って思い切り蹴飛ばされ、これ以上ひどい目にあわされる前に飛んで逃げ帰った。

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