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かわいこちゃんの真実

「マテコラ千里!」
「いやあああ!」


ただいま俺は放課後、絶賛全力で逃走中。誰からって?晴彦ちゃんに決まってるじゃないですか!
聞いてよ、晴彦ちゃんてば朝部屋の戸を開けたら仁王立ちして立ってたのよ!思いっきり閉めたっつの!鍵かけて自室に逃げ込んだらずっとドンドン叩いてる音がしてたけど、まだ部屋にいた高見沢が異常に気づいて代わりに玄関に出てくれた。そこでどんな話し合いがあったかはしんないけど、晴彦は帰ったみたいで高見沢が俺の部屋をノックして『もう大丈夫だ』って言ってくれた。
ものすごく心配されたけど、ただちょっと喧嘩して今顔合わせられないだけっていうと納得したのかしないのか変な顔して俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。くそう、イケメンめ。優しいじゃねえか。

ごめんよ晴彦。高見沢にお前はきっと嫌な奴としてインプットされてしまったに違いない。それから今日一日今に至るまでことごとく晴彦ちゃんを避けてやったら、放課後ついにブチ切れた晴彦が俺をものすごい形相で追いかけてきたのだ。

やだわ、これ傍から見たらカップルの痴話喧嘩みたいじゃないかしら?

そんな事を考えながら必死に逃げる。俺、逃げ足だけは速いんだぜ!
ようやく後ろから晴彦の気配を感じなくなって、ほっと一息ついて歩き出す。

「…いて。」

歩き出して、こないだ羽曳野とぶつかった時に捻った足首にまた痛みがぶり返す。ちぇっ、せっかく治りかけてたのに。さっきの全力疾走でまた痛めちゃったかな。晴彦のせいだ。あとで治療費請求してやろう。いや、やめとこう。

歩きながら、自分の今いる場所をきょろきょろと見回す。えらいとこまで来ちゃったな。旧校舎の外れだなんて放課後だけじゃなく普段でもあんまり誰も近寄らないのに。


俺がどうしてこんなに徹底して晴彦を避けるのか。それは、晴彦ならきっと俺の最近の不調の原因を知ってるからだ。俺はうっすら原因に気付いてる。だけど、臆病者な俺はそれを確定したくないんだ。気付かないふりをしていれば、いつかなんとかなる。嫌な思い何てすることなく過ごすことができるはずなんだ。でも、晴彦は容赦がない。きっとそれを許してくれない。晴彦に捕まったが最後、俺はきっと逃げ道を失う。

はあ、と大きくため息をついて、さあ次は寮部屋までどうやって無事に逃げようかなあ、なんて人気のない旧校舎を歩いていたら、なにやらぼそぼそと人の声が聞こえてきた。


ひい!これはあれか!噂に聞く旧校舎の幽霊か!なんでも昔病気で死んでしまった腐男子が、萌を探してさまよっているという…!

…誰が流したか知らんがちっとも怖くない怪談だ。

それか、もしかしてこっそりエッチしてるやつらがいるとか!?なーんてドキドキしながら声のする方へ向かうと、一つの教室の中からするものであることがわかった。

あれ?俺、最近この声聞いたことある。

どこか聞き覚えのある声に、そっとバレないように教室の中を覗きこむ。すると、そこにいたのははなんと俺が今この世で二番目に会いたくない人物、羽曳野だった。

うわ、と思ってそこから去ろうとしてふと気がつく。

なんでこいつ、一人でこんなとこにいんの?


もしかして高見沢に内緒で誰かに呼び出されたのだろうか。もし脅されて、とかなら最悪のことが起こる前に止めないと。


…高見沢が、悲しむ。



二人で仲良く並んでいるところを想像して、しくんと胸が痛んだ。それに気づかない振りをしてとにかく様子を見ようと身を潜めていたら、羽曳野がくすくすと笑っているのに気がついた。




それは、俺の想定外。

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