×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -




5

「大丈夫か?佐山」

駆け寄って倒れる佐山をその場に座らせ、優しく背中を撫でていたわってくれる高遠に佐山はこくんと頷く。優しい高遠の言葉や態度よりも何よりも、苛められている現場を秋元に見られてしまったと言うその事実に佐山の頭は真っ白になってしまった。

どうしよう。呆れられた?

バクバクと心臓が激しく動き、フルフルと震える佐山を秋元が何もいわずにただじっと見つめている。

「あ、秋元君、あの、僕達…」
「こ、こいつが、いつまでもお前に付きまとってるから」
「ふざけんなよお前ら!」

しどろもどろに秋元に言い訳をする生徒たちに向かって怒鳴ったのは高遠で、あまりの剣幕に佐山をいじめていた者たちはひっとすくみ上った。

「大体てめえらなあ…っ」
「…ふざけんな」

そのまま怒りのままに続けて生徒たちを罵倒しようとした高遠の言葉を遮ったのは、低くて小さい秋元の静かな呟きだった。

「か、一樹…」
「誰がそんなことをしてくれなんて頼んだ?何の権利があってお前らがそんなことをするんだよ。僕が誰といようが誰を好きであろうがお前らに関係ないだろう。付きまとってんのはお前らだ。お前らみたいなゲスな奴らに名前を呼ばれたり俺の為なんて余計な事される方が迷惑なんだよ!」

があん!と秋元がそばにあった机を蹴り上げる。蹴り飛ばされた机は周りの机を巻き込んで、佐山をいじめていたやつらにぶつかった。

「出て行け!ここから今すぐ!二度とそのツラ見せんな!」



ばたばたと慌てて走って逃げていく生徒たちを見ようともせず、座り込んで秋元を見上げる佐山を辛そうにじっと見つめる秋元。当の佐山は秋元が今目の前でしたことが信じられずに何を言っていいのかがわからない。

怒ってくれた…?自分がされていることを、咎めてくれた?
呆れられたんじゃない?まだ、俺は一樹に好きでいてもらえてる…?


「…航平。別れよう」

佐山が秋元の行動を理解しようと必死で考えているその時、秋元の口からぽつりとつぶやかれた。

傍にいる高遠も、佐山も大きく目を見開いてその言葉を放った秋元を見つめるしかできない。

「今まで、ごめん。僕の事はもう忘れて…」
「い、いやだ!」

くるりと背中を向けて歩き出そうとする秋元を、佐山が必死に引き止める。
立ち上がって秋元の腕を掴み、泣きそうな顔で秋元を見つめる。

「お、お願い!お、俺、我慢するから!何されても、何言われても我慢するっ…!秋元に迷惑なんかかけない!だから、だからっ…」
「…ごめんね、佐山。」
「…っ!」

必死にすがる佐山の腕を無理やりはがし、今まで読んでいた名前ではなく名字で呼んでそう告げると、秋元は教室から駆けて飛び出した。

「いやだ!一樹っ!行かないで…!、俺を、俺を捨てないで…!」

佐山の叫びに耳をふさぎ、振り返ることもせずに一心不乱に駆けだした。



「秋元!」

ぐい、と引っ張られてがくんと後ろに倒れそうになり、足を止めて振り向くと追いかけてきたのだろう同じように息を切らした高遠が怪訝な顔をして秋元を睨みつけていた。
ぐっと唇を噛んで責めるような高遠の目から視線をそらし顔を背ける秋元の腕を高遠がギリ、と掴みあげる。

「お前、どういうつもりだ!なんであんな…」
「…っ、しかたないだろ!」

責めようとする高遠の言葉を遮り、秋元が泣きそうに顔を歪めながら叫ぶ。

「僕が、僕といる限り航平はああやっていじめられる!僕のせいで航平が傷つくんだ!僕は…、航平があんな目に遭ってるなんて知らなかった!知ろうともしなかったんだ!僕が、僕が初めに子供じみた感情で航平をいじめてたせいで…ここ最近お前といて楽しそうにしている航平にやきもちを妬いて、冷たく当たっていたせいで!、僕は航平を幸せになんてしてやれない!悲しい、怖い思いしかさせることができない!
航平には、お前が優しくしてやればいいだろう!お前相手だとあんなにも楽しそうに笑うんだ!僕じゃ、僕じゃ航平をっ…」
「ふざけんな!」

ガツッ!


苦しそうに自分の心のうちをぶちまける秋元が最後まで言う前に、高遠が思い切り秋元を殴りつけた。その勢いでその場に倒れ、驚いたような顔を高遠に向ける秋元の胸ぐらをつかみ、高遠は今まで見せたことのないような怒りに満ちた顔で秋元を睨みつけた。

「てめえは、自分の事ばっかりだ!僕のせいで、僕がしてたから、んなこたぁ初めからわかってたことだろうが!結局テメエは自分だけがかわいいんだ!自分がしたことで傷つくあいつが見たくないってんならそんな目に合わない様に守ってやりゃあいいだけの話だろうが!
お前は口ばっかりであいつを好きだ好きだっつってな、結局あいつに何を返してやったんだよ!俺に嫉妬して冷たくして、そのせいで周りの奴らからまた嫌がらせされるようになったっていうのに『僕のせいで傷つけたくないから別れる』だと!?甘えんのも大概にしろ!」

秋元が、高遠の言葉にハッとしたような顔をして高遠をじっと見つめる。そんな秋元を思い切り睨むと、掴んでいた胸ぐらを、秋元を投げ飛ばすかのように離した。

「佐山を必死に追いかけて恋人として俺の前に戻ってきた時のお前はそんなに情けない奴じゃなかったはずだ。あの時に俺に言った言葉は嘘かよ。しょせんてめえの佐山に対する気持ちなんざそんなもんだったんだ。自分が傷つくのを怖がってるだけの大馬鹿野郎だ。今のお前に佐山の恋人でいる資格なんざねえよ。お前の望み通り俺があいつを守って慰めてやっからとっとと帰りやがれクソ野郎」

[ 20/26 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]

top