×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -




2

「にゃんこちゃん!」
「にゃー」

紫音がぱたぱたと駆け寄って抱き上げると、子猫は嬉しそうにごろごろとのどを鳴らして顔を紫音にすりつけた。

「ったく、晴海よぉ。とんだやんちゃ猫を預けてくれたもんだぜ。見ろよこの傷」
「あははー、ごめんね二見さーん。」

袖をめくりあげてひっかき傷を晴海に見せると晴海は頭をかきながら少しも悪びれない声で謝った。

『実はね、紫音ちゃん。紫音ちゃんが入院しちゃったあの日、俺、子猫の事が気になって中庭に行ったんだ。そしたら、いつもの場所でぐったりしててさ。』

部屋で子猫がいなくなった話をすると、晴海が申し訳なさそうに話し出した。紫音が倒れたあの日、同じように子猫も倒れていたのだと。晴海は急いで救急の動物病院へ連れて行った。どうやらカラスか何かに襲われたらしく、傷だらけで特に足をやられて動けなくなっていたらしい。
幸いにも大事に至る傷ではなかったのだが、そんなに俊敏に動けるわけでもない。
このまま元いた場所に置いておけばまた同じ事が起こるかもしれない。
そうなったときの紫音の泣き顔を想像して晴海はひどく胸が痛んだ。そこで、二見に頼み込んで子猫が元気になるまで預かってもらっていたのだ。

『急にいなくなってびっくりしたよね、ごめんね。』

そう言って頭をなでる晴海に、今度は紫音の胸が痛んだ。晴海はなにも言わないけれど、子猫のいない原因を紫音に話せなかったのは紫音が拒絶をしたせい。

『二度と近づくな』

紫音が言ったことを守っていたからだろう。

『ごめんね』
『…先輩。俺の方こそ、ごめんなさい。ありがとう。』

眉を下げてしゅんとした笑顔を向けながら頭をなでてくれる晴海に、紫音はすり寄った。

[ 276/283 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]
トップへ戻る