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「中学生の時にね…、放課後、りーちゃんがお友達と掃除当番の道具を片付けに行ってる間にね。俺、カバンを先に持って下駄箱に行ったの…。そしたらそこでね。」

人気のない下駄箱の隅から、『木村梨音をさぁ…』と言う声が聞こえた。梨音の友達が梨音を探しているのかと、紫音は声のする方へと足を向け、覗き込んでそこにいるのが学年が上の不良たちであったことに気付き慌てて身を隠す。
嫌な予感がして、悪いとは思いつつ話に聞き耳を立てた。

『今年入学してきたあいつ、まじかわいいよな。女みてえ』
『てかさ、女じゃねえの?』
『いや、女じゃなくても俺ならイケるなー。』
『俺も俺も!てかさ、あいつ、やっちまわね?女は中出しとかめんどくせえじゃん、でも木村梨音は男だからどんだけ出してもめんどくせえことなんないし。あー!考えたらちんこ固くなってきた。犯してえ!セックスしてー!』
『俺も。マジガッチガチのちんこあいつのケツに早くねじ込んでヒイヒイ泣かせてえなー!いつする?』

紫音はその時、所々の単語の意味しかわからなかったがそれは明らかに梨音の身に害をなす話だとは理解した。
隠していた身を下駄箱から現し、よからぬことを企んでいた不良共を睨みつける。突如現れた紫音に、不良たちはまだ紫音の強さなど知らぬ為人質にしてやろうと囲んだが軽く押しとばされただけで皆あっという間にのされ、それから紫音を見る度にひどく怯えるようになり、梨音には少したりとも近づくことはなくなった。

それから、紫音は聞いた会話を元にその意味などを調べてみた。一体何をしようとしていたのか、これから先梨音を守るために必要な情報を頭に入れておこうと思ったからだ。そして、それが肉欲を表す意味だったことを知りひどくショックを受けた。

紫音は、怖かった。

ただ『セックス』と言う単語だけなら保健体育でも習ったのでそれが子供を作るための行為だということはわかっていた。だが、紫音は『犯す』と言う意味で調べてしまった。
そのキーワードを元に現れた、それに対する意味や事件。怖いことや悲しいことばかりの情報を目にし、紫音は母にすがりついて泣いた。

『お母さん、怖い。セックスが怖い。俺、あんなのしたくない。』

もはやその行為自体を怖がって怯えて泣く紫音を、母は優しく抱きしめた。

『紫音。怖がらないで。あなたが知ったそれは、本当はとても素敵な行為なの。確かに、相手の意志に関係なく無理矢理の行為は恐ろしいわ。でもね。本当に大好きな人とするそれは、何にも怖くなんてないの。むしろ、大好きだからこそ、もっと仲良くなりたくなって、そしてそれによってもっと大好きになるのよ。』
『でも、でも、それって本当は女の子とすることなんでしょう…?』
『そうね。でもね、紫音。お母さんは、大好きになった人が相手なら、男の子でも女の子でも、大好きだって触れ合うことは悪いことだとは思わないわ。だからね、紫音。』


「いつか、本当に心から大好きな人ができて、相手も自分を大好きだって言ってくれたなら、怖がらずに触れ合ってごらんなさいって。お母さん、そう言ったの。
俺、先輩が好き。大好き。だから、もっと触ってみたい。…触ってほしい。」
「…紫音ちゃん!」

全てを聞き、最後の紫音ちゃんの言葉に俺は胸がいっぱいになって思い切り抱きしめた。

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