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2

体が触れあう部分が、ひどく何か別物のように感じる。そこだけがまるで俺の意志が置いて行かれているみたいに、俺の想いよりも先走って紫音ちゃんを愛してるって叫んでるみたい。
かわいいおねだりに必死に欲望と戦いながら紫音ちゃんの隣に潜り込んで寝ころぶと、紫音ちゃんは今より少し潜って、なんと添い寝して横になる俺の体に腕を回してきた。

な、なに!?

そしてなんと、ひどく焦る俺に気付かずに、そのまま自分の体を密着させたかと思うと…俺の胸元に顔をうずめた。


―――――なんて拷問だ!


引っ付かれて硬直して固まる俺を、紫音ちゃんがちらりと上目遣いで見る。

やめて!勘弁して!

「ど、したかな?ひ、引っ付いてくれるのは、いいけど、汗臭いんじゃないかなあ〜、なんて」

自分でおかしな話し方をしているのはわかってる。それでも紫音ちゃんに違和感を感じさせないように頑張ってんだ、多少声が上擦るのは許してほしい。
両手を不自然にあげた形のまま、平常心、平常心と呪文のように心で繰り返し笑顔で紫音ちゃんに問いかける。

「…いっつもね、りーちゃんと寝るとき、りーちゃんが俺にこうやってぎゅって抱きついてくるの。それでね、俺がりーちゃんの頭をきゅって包んで抱っこするの。りーちゃんはちみっこいから、いつもすっぽり俺の体の中に埋まるの。」

そういえば、さっき
『一人で寝るのはいやだ』
って言ってたっけ。あれって、そういう意味だったのか。

子猫のように一つのベッドで寄り添い身を寄せ合って眠る二人を想像して顔が綻ぶ。と同時に、梨音ちゃんに対して嫉妬も沸く。毎日抱き合って眠るだなんてうらやましいじゃねえかちきしょう。
ちょっと前まで俺も克也やほかの奴ら同様梨音ちゃんのかわいさにやられてたはずなのに、今じゃそのかわいい梨音ちゃんにさえ嫉妬する。
あの子はずっと、このかわいい紫音ちゃんを独り占めしてたんだよなあ。ずるいなあ。

「それが嫌だったんじゃないよ。りーちゃん好きだもん。でも、でもね…。」

そこまで言うと、紫音ちゃんは上げていた顔をまた俺の胸に埋めさっきよりも腕に力を込めて抱きついてきた。

「…俺も、りーちゃんみたいに、すっぽり誰かの体に埋まってみたかったんだ。先輩は、俺よりちょっとだけちっちゃいけど、さっき俺の事も軽く抱っこしてくれたもん。俺がちょっとだけ下に下がったら、できるよね。」

俺の胸にピタリと頬を付け、えへへ、と笑いながらしがみつく紫音ちゃん。抱きしめるその腕が、離れたくない、離さないで、と訴えるようで。
ああ、この子はほんとうは、自分も誰かに守ってもらいたかったんだなあ、なんて胸がぎゅっとなった。
いつだって、梨音ちゃんのために強がって涙を隠してきた紫音ちゃん。俺は改めて、この健気な兄想いの子猫ちゃんを思い切り甘やかしてやろうと心に決めた。

紫音ちゃんのお望み通り、胸に埋まる頭を両腕ですっぽりと包んで胸に抱きしめてやる。

「せんぱい、あったかーい…。大好きー…。」

すりすりと俺の胸に頬ずりする紫音ちゃんに、


…ごめん。さっきの優しい気持ちよりもなによりも欲望に忠実な正直な息子が反応しました。


「…あれ?せんぱい、なんか固い棒みたいなのズボンの中に入れてるの?」

はい、確かに固い棒が入っております。じゃなくて!
いやほんとまじですまん!せめて紫音ちゃんに触れない様に腰を引く。うう、なんて情けないカッコ。

「…せんぱい…?」

不思議そうにじっと見つめられて、ずきゅんと股間に余計に熱が集まる。ああ、せめて。せめて、そのきりりとしていながらかわいらしい事ばかり放つその口に触れたい。

「…!」

そう思っていたら、無意識に親指で紫音ちゃんの唇を撫でていた。一瞬びくりと体を震わせ、大きく目を見開いて俺を見る。その目に自分が今何をしたのかを気付かされ、さあっと青くなって慌てて指を離した。

「ご、ごめん!あの、その…」

上手い言い訳が全然浮かばなくて、しどろもどろと言葉を濁す。うああ、据え膳くわぬは何とやらで目の前のごちそうはすぐにいただいちゃってたこの俺が。まさか、たった一人の男の子に手も足も出せなくておろおろしてるなんて誰が想像できただろう。

あわあわと慌てる俺の手を、紫音ちゃんがそっと掴んだ。

「…先輩…。さっきの、もっかい…。」

少しとろんとしたような目で俺を見つめながら頬を染める。な、なんだとおおおおおおお!!!

「し、紫音ちゃん…。ごめん。それはできないよ。」

野性を何とか根性で抑え込み、そういうと紫音ちゃんは悲しそうに眉を下げうるりと目を潤ませた。

「ち、違うんだ。いや、とかじゃなくて、その…。正直に言うと、俺、やばいんだよね。」

このままでは無理やり襲ってしまうか、離れてしまうかもしれない。
『そばにいて』と泣くこの子から離れるだなんてしたくない。でも、無意識に煽られて平常心を保っていられるほどできた男なんかじゃないんだ。ごめん、紫音ちゃん。情けなくてごめん。
目の前で梨音ちゃんが襲われそうになったところを見ていた紫音ちゃんに、自分の感情を全て伝えたらどう思われてしまうのだろうかと考えると怖くて怖くて仕方がない。それでも、やっぱり俺は紫音ちゃんが好きだから。この先、紫音ちゃんに触れないままだなんてできるはずがない。俺は観念して自分の現在の状態を正直に紫音ちゃんに話すことにした。


「…俺、ね。紫音ちゃんが好きだって言ったよね。そんでね。怖がらせたくない、んだけど…。俺、紫音ちゃんに、色んなことをしたくなるんだよ。」


俺の言葉に、紫音ちゃんがきょとりとした顔で目を向けた。

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