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7

目の前で晴海の後ろに隠れるようにしてひっつく紫音にそこにいる皆どういう態度を取ればいいのかわからない。
少し涙の落ち付いた紫音をひょいと軽々姫だきにして晴海が屋上へ現れたのは校庭での劇的な告白より少し経ってから。二人が上がってくるまで、いや、上がってきてからさえも身動き一つとることのできなかった屋上の面々は誰一人として言葉を発することができなかった。

一方、当の晴海はとろけそうに目じりが下がりにこにこと誰も今まで見たことのない笑顔で後ろに隠れる紫音をちらちらと振り返り見る。

姫抱きにした時も、嫌がるどころか落ちない様にと晴海の首にしっかりと腕を回していた紫音。屋上についてから、そっと下ろすと晴海の制服の後ろを握りしめぴたりとくっついて隠れる紫音。

ああもう、なんなのこの子。

晴海はにやける顔を押さえようともせずに一人ご満悦だった。

「あ、紫音ちゃん。泣きすぎて喉乾いたんじゃない?ちょっと待ってて、ほら、あそこに置いてあるお茶取ってくるから」

そう言って背中の手を離させようと振り返ると、紫音は泣きそうな顔で今度はぎゅうとお腹に腕を回ししがみついた。

「やだ、やだ。離れちゃやだ。いらない、おちゃいらない。そばにいて。せんぱいと離れたくないよぅ」

泣きそうになりながら嫌々と首を振りじわりと涙を浮かべる。
晴海は大声で叫んで走りだしたくなった。


何この子――――――――!!超かわいいんですけどお―――――――――!!!!


「お、俺、取ってくるッス!」

そんな紫音を見て、ひとりの下っ端が弾かれた様に駆け出し隅に置いてあった晴海のお茶を取り猛然たるスピードで取ってきたお茶を紫音に差し出した。

「ど、どうぞ!!」

お茶を差し出す下っ端を、晴海の後ろからそっと覗き込んでしばしじっと見つめる。

「…ありがとお。」

へにゃり、と眉を下げてぎこちなく笑いお礼を言う紫音に下っ端は真っ赤になった。
その下っ端だけではない。その場にいてまるで変な生き物でも見る様に困惑した顔で見つめていたその他のチームの奴らも皆、一瞬目を見開いたかと思うと次の瞬間真っ赤になった。にやける口を押さえるもの、うわー、うわー!と奇声を発する者。そこにいる者全てが今まで見たことのない紫音の笑顔に庇護欲が掻き立てられた。

「お、おい、木村紫音!お菓子好きか?」
「チョコレートあるぜ、ほら!」

それをきっかけに、今まで遠巻きに見ていたチームのメンバーがそれぞれ皆一斉に紫音に構いだす。

「…チョコレート、すき。甘いのすき。」

晴海の後ろからちょこんと顔をのぞき込ませながら小さな声で答える。
皆一斉にそれぞれ自分のポケットやコンビニの袋を焦って漁りだし、見つけた飴やチョコレートを紫音に差し出した。

「だあ――――――!!!てめえら、紫音ちゃんに構うんじゃね――――!!!」

片手で後ろの紫音を隠すようにし、もう片方の手で近づく仲間を追い払う。

こいつら、紫音ちゃんのかわいさに気付きやがって!

「せんぱい、せんぱい。」

近づく輩を威嚇し続ける晴海に、紫音が後ろからつんつんと制服を引っ張って呼んだ。

「あ、そうだね。さ、克也のとこに行こうか。」

晴海の言葉に、こくんと頷き歩き出した晴海の後ろについていく。
皆が紫音に構いだしてからも、ただ1人克也だけはいまだ眉間にしわを寄せ動こうとはしなかったのだ。

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