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14

複数の敵に襲われながらも確実に倒していく克也のその後ろで、梨音は晴海と並んで敵に立ち向かう紫音を見た。そして、ふと飛ばされたキツネ面の男に目をやる。その手に、銀色に光るものを見つけた時。そのキツネ面の男の目が紫音にしか向いていないことに気付く。そして、その男を見る紫音の気が一瞬ゆるんだことも。梨音は気が付けば駆け出していた。

紫音を、守らなきゃ。
梨音は、紫音にナイフが突き刺さるよりも早く紫音を庇った。

ぱたり、と床に倒れた梨音を呆然と見つめる。そのお腹から、花が咲くようにゆっくりと広がる鮮やかな赤。

「梨音―――――――――!!」

克也の叫びも、紫音の耳には届かない。ただただ、目の前で崩れ落ちた梨音を見つめる。倒れた梨音が少し顔を上げ、紫音を見つめる。

「…しー、ちゃ…、よか、た…」

その顔に、柔らかな笑みを見た瞬間。

「…っうあああああああああああああ!!」

紫音は、壊れた。


その後、その場にいたものはそこで起こった事実を皆顔を青くして語る。
木村紫音は、魔物だと。人間ではないと。

あの後、紫音はキツネ面の男に飛びかかった。顔面に一発、拳を入れたかと思うと今度は横腹に思い切り蹴りを喰らわす。キツネ面の男が、体制を整える暇もないほどに紫音は攻撃の手を緩めなかった。それは圧倒的な制裁。手を返す間もなく、キツネ面の男はただ攻撃を受け続け、やがて床に倒れ。それでも、紫音は止まらなかった。

カジと言う男が、頼むからやめてくれ、許してくれと紫音に縋ろうとも、その腕を押さえようと掴んでも、制止するとこともできない。敵であるはずの晴海に、頼むからあいつを止めてくれと土下座をした。

「紫音!!」

目の前の紫音をしばし唖然と見つめていた晴海がそれにようやく気がつき、いまだ拳を振るおうと振りかぶる紫音の背中から紫音を羽交い絞めにして引きはがす。

「あああああ!!うあああああああ!!」
「紫音!紫音…!」

腕の中でもがき暴れ狂う紫音を必死に抱きしめ、その名を呼び続ける。やがて救急車のサイレンが響き渡り、その音を遠くに聞きながら紫音は晴海の腕の中で意識を闇に飛ばした。

end

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