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9

梨音の顔が恐怖に歪み、紫音は言葉をなくして歩みを止める。途端にがくりと押さえ込まれ、紫音はがつんと顔を床に押し付けられた。

「総長、そいつはredの総長との取引に使うんじゃあ…」
「ん〜、使うよお〜。いつもならさあ、傷つけないで使うんだけど〜。なあんか、もっと面白い事思いついちゃってさあ?」

そう言いながら、面の奥の目を床に押さえつけられている紫音に向ける。

「…傷はつけたら逆上されっかもだけどお〜…、汚されちゃったら、まず絶望すんじゃあなあい…?」

キツネ面の目の奥が、さも楽しげににい、と笑う。梨音の顔に当てていたナイフを制服の第一ボタンの下に潜り込ませ、くっと持ち上げてキツネ面の男は梨音を見た。

「…お前、もうヤラレちゃった?」
「や、…?」

ヤラレるって、なんだろう。言葉の意味が分からなくて困惑した目を向けると、キツネ面の男はやっぱりねとつぶやく。

「ナイトくん。今からゲームをします!」

キツネ面の男は高らかにそう告げると、紫音を立たせ腕の縄をほどくように指示をした。紫音を押さえていた男たちが言われた通りに紫音を起こし、両側から動きを押さえながら紫音の腕をほどく。突如自由になった腕を、違和感を振りほどくように軽くさすり手首を回しながら、紫音は怪訝な目でキツネ面の男を見た。
一体、何をするつもりだろうか。自由になったとはいえ、梨音にはキツネ面の男がナイフをちらつかせているためにその場から動くことができない。
不安と恐怖で震える体を、紫音は気付かれない様にするのに必死だった。

「君からお姫様までのこの距離。約6メートル位のこの距離を、君に今からお姫様を救い出すために走ってもらいます。ただし」

キツネ面の男がぱちん、と指を鳴らすと同時にまたさらに倍ほどの人数が部屋の中にぞろぞろと現れる。広く感じたこの部屋が、顔つきの悪い不良たちであふれんばかりになり、梨音までの道行きは30人近くの不良で埋め尽くされてしまった。

「こいつらを、なぎ倒しておいで。制限時間は、20分くらいかなあ?お姫様が、悪者にひん剥かれて犯されるまでさ」
「…!」

けらけらと笑い声が響き、紫音は真っ青になった。今、なんて。あいつは何て言った?

「…お、おかされる、…って、…」
「ふふ、お姫様はなあんにも知らないんだねえ。ま、ナイト君が大事大事にしてくれてたもんねえ。…ここにね、」

梨音の問いかけにふふ、と笑うとナイフをくるりと返し、その柄で梨音の穴のあたりをぐいと押す。

「ひ…!」
「悪い男たちのちんこ、ブチ込むことを言うんだよ」

面の奥の目がにい、と笑う。自分の周りを囲む男たちを怯えた目で見まわすと、梨音を囲んでいる男たちの目がいやらしく歪みぎらぎらと欲情した目で自分を見ているのに気が付いた。梨音はその目を見て昔の出来事をフラッシュバックさせる。あの時、一人で水汲み場に行った時。あの人は同じ目を、していた。自分を組み敷いてズボンを脱がせ、幼い自分をむちゃくちゃにいじったあの学生服の男。

「あ…、あ…!」

恐怖のあまり、目の焦点が歪み両の目からぼろぼろと涙が溢れ体ががくがくと震える。

「しー、ちゃ…!しーちゃん…!しーちゃんっ、しーちゃん…!!」
「ゲームスタート」

キツネ面の男はそう言うと、ナイフでぶちりと梨音の制服の第一ボタンを切り飛ばした。

「いやああああああ!!」
「梨音――――――!!」

梨音の叫び声を合図にするかのように、部屋にいた男たちが一斉に紫音に襲い掛かった。

自分の目の前で、梨音が男達に囲まれその衣服をゆっくりと脱がされていく。泣きわめく梨音に、紫音は自分に襲い掛かる男たちをなぎ倒しただひたすらに前進する。
次々と襲いかかる男たちを殴り飛ばし、蹴り倒し、殴られようが蹴られようが足を止めることはない。

早く、早くしないと。梨音が傷つけられてしまう。

「…っ、どけええええええッ!!」

紫音は倒しても倒しても自分に飛び掛かる男たちを倒し続けた。

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