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7

「う…ん」
「おっ、お目覚めか」

頭上から聞こえる聞きなれない声に上手く開かない目を向け、ぼんやりと映る周りの景色を紫音はゆっくりと見回した。
ここはどこだろう、と体を起こそうとして自分の腕が自由にならないことに気付く。目線を腕に落とすと、両手がひとまとめに縛られているのが見えた。

「…?」

どうして自分の腕はこんなことになっているんだろう。確か、りーちゃんと話をしていたら、フェンスを越えて違う学校の服を着た人たちが…

「…!」

そこまで思い出して、紫音はようやく覚醒した。慌てて目を見開き体を捩ると、自分の隣に梨音が倒れているのを見てほっとする。だが、同時に自分の周りを幾人もの人が少し遠巻きに囲んでいるのに気付くと、体を起こして梨音を後ろに庇った。

「どーもー。お久しぶり〜。遊園地ではありがとうね〜」

ふざけた口調で挨拶をしてきたのは、遊園地で梨音を攫おうとして紫音に倒された男だった。その男の顔を見て、紫音は自分たちが今どうしてどこにいるのかを一瞬にして理解した。

自分たちは、この男たちに攫われたのだ。まさか自分たちを攫いに学校にまで乗り込んでくるとは思わなかった。警戒が足りなかった。こんなにも大人数の不良に囲まれたことなどいままでになく、しかも縛られ自由を奪われるような目にあったことなどない。怖い。怖くてたまらない。だが、梨音がいる。梨音に手を出させるわけにはいかない。
紫音は震えだしそうな体を唇を強く噛みしめることで必死に耐えた。

「お〜お〜、こっわいかおしちゃって〜。そんなに睨んじゃって、自分が今どういう立場なのかわかってないのか、ねっ!」
「っ!」

ニヤニヤ笑いながら近づいた男が、言い終わると同時に紫音の顔を蹴り上げる。それでも、声を上げるわけにはいかない。梨音はいまだ気を失っているんだ。自分が声を出してしまえば、目が覚めてしまうかもしれない。梨音がまだ目を覚まさないうちになんとかこの状況から脱出しなければ。こんな怖い光景を、梨音に見せたくない。

より一層強く唇を噛みしめ、自分を蹴った相手を強く睨む紫音に手を出した男が一瞬怯む。

「な、なんだよ、こいつ…!」
「おい、よせ。総長の指示なしに手を出すと後がうるさいぞ」

総長。その言葉を聞いて、やはりここは克也たちを狙っていると言っていたチームのアジトなんだと理解した紫音は、余計にショックを受けた。
『梨音を危険な目に合わせたくないから』と克也たちに絶縁を継げた自分が、間抜けにも簡単に捕まってしまうだなんて。状況から言って恐らく、自分たちは克也たちに手を出させないための人質にされてしまうのだろう。

自分のせいで、晴海が危険な目に合わされる。

そう考えただけで紫音は泣きそうになった。
落ち着け、と自分に言い聞かせてばれない様に辺りを見渡す。30畳ほどの何もない部屋の中に、7人。入り口は自分の正面、縛られているのは腕だけ。しかも幸いなことにその腕は前でひとまとめにされている。

―――――――いける。

「やあやあ、ごくろーさーん。人質くん上手く捕獲できたってー?」

紫音が今まさに足に力を籠め、床を蹴りだそうとしたその時である。正面の入り口から、キツネの面を被った背の低い男が現れた。

部屋にいた男たちが途端に姿勢を正し、さっと道をあける。背は低いし華奢で小柄な体。だが、紫音は顔こそ見えないもののその男を取り巻く空気を感じて今までにない恐怖を感じた。

明らかに、格が違う。いや、格と言うよりは、こいつ自身が違う。

この男が現れる前ならば、何とか部屋にいる七人を撃破して逃げることもできただろう。だが、無理だ。紫音はこの男1人であったとしても逃げ出すのは容易ではないと感じた。

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