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7

ふと、聞こえた言葉にぎゅっと閉じていた目をゆっくりと開ける。

…お友達よりも、もっと深くて甘い『好き』…?

「せんぱい…?」
「あは、難しいかな?あのね、紫音ちゃん。俺はね、紫音ちゃんが好きだって言ったでしょ?それはね、ただ遊んだりお話して楽しいだけの好きじゃないんだ。
…『楽しい』の他に、『幸せ』が入るんだよ。紫音ちゃんといるとね。ここが、」

そう言って、晴海は指で自分の心臓をとんとん、と差した。

「温かくなって、ぎゅって痛くなって、紫音ちゃんとずっとずっと一緒にいたくなるんだよ。くっついて、ぎゅうってしたくなるんだ。」

見たことがないほどに優しい微笑みを浮かべ、自分を見つめる晴海から紫音は目が離せなかった。

――ずっと、一緒にいたいの?俺を、ぎゅってしたくなる?

「…わかんない…」

わからない。知らない。そんな気持ち、初めて聞いた。初めて知った。晴海先輩は、とてもとても優しい。俺だって、晴海先輩とずっと一緒にいたいって思う。
それは、お友達の好きじゃないの?

「いいんだよ。紫音ちゃん。無理に理解しようとしなくていいんだよ。ただ、ほんのちょっとだけでいい。俺が今言った『好き』を、考えてくれないかな?今すぐじゃなくていい。これから、少しずつ。紫音ちゃんに、俺の『好き』が伝わればいいなって思うんだ。」
「…『好き』が、伝わる…」

じゃあ、急に自分にばかり話しかけたり、また毎日夜に来てくれるようになったり。あれは全部、滝内先輩と梨音のためじゃなくて、晴海先輩が本当に俺にしたくてしてくれたことなんだろうか。

―――夢のように、以前のように、自分を本当は敵視しているわけじゃないんだろうか。

もし、そうなら。晴海先輩が、本当に俺だけに、そうしてくれているのなら。

「あ…」
「紫音ちゃん?」

晴海が、自分のために。そう考えた瞬間、紫音はどくりと今まで感じたこともないような胸の大きな鼓動を感じた。
かあ、と熱が一気に顔に集まるのが自分でもわかる。目の前の晴海をまともに見られない。紫音は自分の腕で赤い顔を必死に隠した。

「紫音ちゃん、顔…」

それに気付いた晴海が確認をしようと紫音の顔をのぞき込もうと近づく。そんな晴海に紫音はいやいやと頭を振ってじり、と下がった。

「紫音ちゃん、ね、お顔見せて?」
「や、やぁ…、見ないで、見ちゃやだ…」

――――かわいすぎんだけど!!

涙目で顔を真っ赤にし、ぷるぷると震えながら腕でそれを隠して必死に顔を背けようとする紫音の両頬を優しくそっとつかむ。

「…紫音。逃げないで。怖いこと、何もしないから。ね?」
「…せん、ぱい…」

目を背けられないようにしっかりと顔を固定され、自分に小さな子をなだめるように話しかける晴海の顔が、すごくすごく、優しくて。

じっと見つめていると、それがゆっくりと自分に近づいてくるのがわかった。

「好きだよ、紫音…」

あと、ほんの数センチ。

そこまで迫って、ふと晴海は紫音が視線をあらぬ方向へと飛ばしていることに気がついた。

「…紫音ちゃん?」

それだけではない。先ほどまで赤かった顔は一瞬にして治まり、ただならぬ緊張した表情に代わっている。

「…聞こえる」

ぽつり、とそう呟くと同時に紫音は晴海の手を振りほどき突然駆け出した。

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