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3

土曜日、前回のように待ち合わせをして克也と晴海は梨音たちを待っていた。

「すいませ〜ん、お二人ですか〜?暇なら遊びませんかぁ〜?」

二人並んでいるとひっきりなしに女の子が声をかけてくる。いつも克也は冷たい言葉を投げつけて追っ払うのだが、晴海は違う。据え膳くわぬは何とやらとできるだけ優しくチャラけて応対し、メアドをゲットするのが常だ。 だが、この日は違った。

「ごめんね、待ち合わせなんだ。大事な子を待ってるから相手できないんだ。」

口調は優しいが、寄ってくる人間全てに完全なる拒絶を示すのは初めてだ。克也はそんな晴海の横で宇宙人でも見るような目で晴海を見ていた。

「…なんか、変わったな。晴海」
「え?なにが?」

気付いているのか、いないのか。克也の言葉にきょとんとして返す晴海を見て克也はここ最近感じ始めた疑問を口にすることにした。

「…なあ、晴海。お前、もしかして…」
「おっ、きたきた!来たぜ、克也!おーい、梨音ちゃーん!こっちこっちー」

克也が話すと同時に二人が現れたらしく、晴海が呼びかけた先を見たことで克也は先ほどの疑問のことなどすっかりと忘れてしまった。

「先輩、おはようございます。遅れちゃってごめんなさい」

ぺこりと頭を下げる梨音に、目が釘付けになる。タンクトップに、Tシャツ。カーゴの短パンにキャップを被っている今時の可愛らしい格好だ。なのだがTシャツが襟ぐりが大きくはだけている。おそらく重ね着用なんだろうが、そのせいで白い肩と鎖骨が丸見えだ。

…あれ、タンクトップも梨音にゃちょっとでけえんじゃねえのか…。前屈みんなったら乳首見えんじゃねえか?

もし俺以外の奴が見たらコロス、と内心決意しながら克也はにこりと笑顔を返した。

「おっはよ、紫音ちゃん!」
「…おはようございます。」

今日も紫音はシンプルな服装だ。だが、黒シャツにモノトーンのタイダイ柄の細身のパンツがよく似合っている。

もう、紫音ちゃんは!あいかわらず襟ぐりの広いシャツ着ちゃって!鎖骨丸見えだし胸元エロいんだってば!

晴海は内心その鎖骨にかじりつきたくて仕方がなかった。そんな気持ちをぐっとこらえてにこにこと笑顔で挨拶をする。紫音がそれに軽く頭を下げて挨拶を返すと、晴海はなんと紫音の頭をなでてきた。

「うん、きちんと挨拶できてえらいね、紫音ちゃん!」

晴海の行動に紫音だけでなく隣の克也も目を丸くする。

…からかってやがるのか

そうに違いない、とまさかの考えを無理やり亡き者にしていると、何だか視線を感じてその先をたどると、克也をじっと見つめる梨音がいた。
何かを期待するようなその視線に、はっとして克也は梨音の傍による。そして、梨音の頭をよしよしと撫でてやった。

「…きちんと挨拶できてえらいな、梨音。」

そう言うと顔を真っ赤にしてきらきらと目を輝かせ克也を嬉しそうに見上げた。

晴海、グッジョブ。

克也は心の中で親指を立てた。

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