×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -




4

夜の中庭で、晴海はしゃがみ込みいじけてぶちぶちと草を引っこ抜いていた。

『紫音ちゃんが好きだ』

一世一代の大告白をした後、しばし無言で自分を見つめる紫音に晴海は気が気ではなかった。
しまった、焦りすぎた。昨日の夜自覚して、考えて、ゆっくり伝えていこうと思っていたところだったのに。紫音があまりにも変なことを言うから、思わず口から出てしまった。

拒絶されるかもしれない。――――――それより、紫音が壊れてしまったら。

最悪の事態を想像して、血の気が引くのが分かる。だが、次の瞬間

『嬉しいな…!俺も、晴海先輩大好き!良かった…、嫌われちゃったのかと思ってたんだもん』

ほっとしたようににっこり微笑んでそう言う紫音に、晴海が脱力したのは言うまでもない。

…たしかにさ。そうなんだけど。あのまま、俺の告白を本気にしたら、紫音ちゃんは壊れちゃってたかもしれないけど。

完全に、『好き』と言う意味が分かっていない紫音に今度は晴海が泣きそうになった。
…もしかして、もうちょっと押しても大丈夫だろうか。いきなり自分を受け入れてくれとは言わない。でも、ほんのちょっとだけでも意識してもらえたら。

「先輩」

いじけて草を引っこ抜き続ける後ろから、声をかけられて顔を上げるとそこにはにこにこと笑う紫音がいた。そんな笑顔一つで、先ほどまでいじけていた気持ちが瞬時に霧散して代わりに甘酸っぱい気持ちが広がり自然と自分も笑顔になる。

「えへへ、ほんとに来てくれた。嬉しい。」

何てかわいい事言うの!

はにかんで笑いながら自分の隣にしゃがむ紫音に益々目じりが下がる。あれ?俺ってこんなキャラだっけ?

紫音が小さく呼びかけると同時にいつものように子猫が現れ、紫音にすり寄る。子猫にエサをやりながら、紫音は晴海とまた以前のように話をした。その時の紫音の、かわいいことったら。

「…かっわいいなあ、紫音ちゃんは」

晴海の口からは、自然とそんな言葉が出ていた。にこにこと笑う晴海を、紫音がきょとんとして見つめる。以前なら、慌てて否定していただろう。だが、これからはそんなことしない。ちゃんと。ちゃんと、思ったことは言って聞かせてあげたい。自分も愛されるんだよ、と、紫音に伝えてやりたい。

「先輩、間違ってるよ?かわいいのはりーちゃんだよ?」
「…いや、紫音ちゃんも可愛いよ?」

返された言葉に内心がっくりきながらも、もう一度、今度はとびきり甘い笑顔を付けて伝える。間違ってなんかない。自分にとってかわいいのは紫音なんだと。だが、紫音はまたきょとんとして首を傾げた。

「…川がいい?」
「違う!」

何なのこの子!わざとなの!?

こんな反応をされたのは初めてだ。今までどんな人間だって、自分が甘い笑顔と共に甘い言葉を口にすればころりと落ちて来たのに。

「紫音ちゃん!あのね…っ『フ―――――ッ!!』いたあっ!」

思わず紫音の肩をぐっと掴んで食いつかんばかりの勢いになりそうになった時、紫音の抱いている子猫が晴海を威嚇して引っ掻いてきた。

[ 226/283 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]
トップへ戻る