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3

さっきの事もあってか、克也はひどくご機嫌だ。梨音も、警戒なく楽しそうに克也と話しながらお弁当を食べている。ほっぺについたご飯粒を取って食べたりするところなんかもうお前ら付き合っちゃえよ、と言いたくなるほど目に毒な絡みだ。

「相変わらずおいしそ〜だね〜!あ、プチトマト入ってんじゃん。」

紫音は困惑していた。
いつもなら、そこに晴海も混ざって談笑しているのだが今日は違った。晴海は何故か自分にばかり話しかける。でも、自分が困らない程度に。晴海は紫音が答える必要ない、相槌で済ますことのできる話を適度に話してくれている。
ついこの前までのぎくしゃくとした空気が嘘のようだ。紫音は、晴海がいつものように戻ってくれたことにほっとしつつも、一体なぜ、と不思議に思った。

「はは、このプチトマトかっわい!お目目ついてんじゃん。ゴマかな?」

お弁当を覗き込み、紫音にぴたりとくっつく晴海。紫音はどうしていいかわからず晴海をおどおどと見た。
視線が合うと、にこりとふにゃけた笑顔を向けられる。その顔が、なんていうか。今までよりも、ずっとずっと優しくて。

紫音はなんだかとても泣きそうな気持になった。

お弁当を食べ終えた後、いつものように晴海が紫音を連れて屋上を出るふりをして出入り口の裏に隠れる。
さあ、これでさっきよりはお話ができる!
高揚しながら後ろにいる紫音に向かい合い、晴海はあれ、と困惑した。紫音が、ひどく元気がないのだ。

「…紫音ちゃん。どうかした?」

心配になって頭を撫でると、紫音は怯えたように体を竦ませた。そんな紫音の態度に、晴海は平静を保ちながらも内心ひどく焦った。なにか、失敗したのだろうか。先ほどまでの自分の行動を思い返す。なにもおかしいところはなかったはず。それに、今日はいつものように接しながらそこに愛情をたっぷり込めていただけなんだけど。

「…先輩こそ、なにかあったの?今日、おかしいよ。どうして、俺にばっかり話しかけるの?お、俺が、りーちゃんと、お話しないように…?た、滝内先輩の、邪魔しない様に…?」

いくら考えても、紫音に晴海の行動の意味は読めなかった。ただ一つだけ思い当たったのは、梨音と克也の事。さっき、自分は梨音を助けられなかった。代わりに克也が助けたことで、二人はもっともっと仲良しになれると思ったのかもしれない。克也にとって、今のところ自分は梨音との仲を裂く邪魔者でしかない。それは紫音自身痛いほどわかっている。梨音に近づく不届き物を排除するための偽りの自分を、克也がひどく嫌っているのもわかっている。

晴海と克也は仲良しだから、お昼の時に紫音が邪魔をしない様に晴海が自分を引きつけておくようにしたのかもしれない。

そんなに、信用ならないのだろうか。晴海にとって、自分は克也と梨音を邪魔する人間に過ぎないのだろうか。でも、それならどうして自分をあんなにも優しい目で見てきたのだろう。
もう、なにがなんだかわからなくなって、紫音はひどく泣きそうになった。
一方の晴海は、紫音の口から出た言葉にぽかんと口を開けてしまった。

なんだって?何言ってんの、紫音ちゃん。

目の前に泣きそうな紫音の顔を見て、失敗した!と頭を抱えた。自分は、意外にも浮かれていたのかもしれない。さりげなく、意識してもらおうと思ってやった行動の結果がこれだ。

「違うよ、紫音ちゃん。俺がね、勝手に紫音ちゃんとお話したかっただけなんだよ。だって、最近お話できてなかったでしょ?お昼だけど、俺の話だけでも聞いてもらえたらなって思っただけで、紫音ちゃんがそんな子だなんて俺全然おもってないよ。」

必死になって言い訳すると、紫音はきょとんと晴海を見つめた。

「…先輩、俺の事、嫌になったんじゃないの…?」
「なんで!」

紫音の口から出たまさかの言葉に、晴海は思わず声を上げてしまった。

なんで。なんでそんなことになっちゃったんだ。

「…だって、先輩、あんまりお話してくれなくなったし、それに、にゃんこちゃんの所にも、あんまり来てくれなくなって…。い、忙しいって、言ってたけど、ほんとは、ほんとは、俺みたいなのとお友達になったのが嫌になったんじゃないかって…」

泣きそうになりながらぽつぽつと話す紫音に、晴海は心の中で自分を何度も殴っていた。ああ、俺のバカ。無自覚に紫音ちゃんを避けていた結果がこれだ。

「…違うよ、紫音ちゃん。そんなはずないよ。ごめんね?俺のせいで、寂しい思いさせちゃったんだね。これからはさ、毎晩行くよ。約束する。だって、俺…」

ぎゅう、と拳を握りしめる。その手が、震えているのが自分でもわかる。

「紫音ちゃん、好きだから。」

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