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がんばれ晴海!

二見のバーを後にした晴海は、一人自室に戻りベッドの上で携帯を眺めていた。

「…かわい」

画面に映る、着ぐるみを着た二人。だが、晴海の目は一人にしか注がれていない。自覚とは恐ろしいものだ。あんなに、あんなに否定していたのに、今画面に映る猫手をした厳つい男の子が晴海の目にはかわいく見えて仕方がない。素直に『かわいい』と口から出る自分が笑える。

『じゃあ、全力で守ってみせろよ。俺からな』

目の前で『紫音をもらう』宣言をした二見に、はっきりと『あげない』と言い返した晴海に、二見が掛けた言葉。
上等だ。守り抜いてやるよ、横からかっさらわれてたまるか。

決意を滲ませた目を見た二見は、至極楽しそうに目を細めただ笑っていた。
ぱちん、と携帯を閉じた晴海は腕を後ろ頭に組んでさて、と考える。

俺は、紫音ちゃんが好きだ。

梨音を守ろうと必死に怖い人物を演じている時の紫音も、本当は泣き虫でお子ちゃまな紫音も。どちらも愛しくて仕方がない。自覚してからというもの、今までの紫音を思い出す度に胸がきゅう、と甘く甘く痺れるようにうずきだす。

だが、同時に自分の今までの態度も思い出してひどく自己嫌悪にも陥る。
自分は、紫音を脅したのだ。

そればかりではない。ことあるごとに、紫音と梨音を比べ、あろうことか紫音本人の前で梨音のことばかりを『かわいい』と連呼し、『紫音ちゃんとは大違いだ』と言ってきたのだ。

「俺の、ばか…」

ごろんと俯せ、頭を抱えて目を閉じる。今思えば、それまでのすべては嫉妬や自分の気持ちを認められない自分の愚かな行為だったと自覚できるんだけれども。二見さんにえらそうに『守る』なんて言っておいて、その実自分が一番傷つけていたのだ。

紫音は、どう思っているのだろうか。今までの自分の言葉や行動を、いつも笑って受け答えていたけれど。

『りーちゃんはね、俺の自慢のお兄ちゃんなんだ』

そう言って笑う紫音を思い出すと胸が一層苦しくなる。恐らく、本音なんだろうけれど。何を言われても、何をされても梨音のためなら全てを差し出し受け入れる紫音。

無理するなと、俺がいるからと抱きしめてやりたい。

「…よし。」

まずは、紫音ちゃんに俺が紫音ちゃんの事を好きなんだと、わからせるところから。
晴海は閉じた目を開くと、天井に向かって拳を突き上げた。

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