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4

お出かけのあった日からも、二人は変わらず屋上で克也と晴海と昼ご飯を食べる。

変わらず、とは言うが全く変化がなかったわけではない。

あの日以来、まず梨音が克也に怯えることがなくなった。屋上へくるなり、克也の姿を見つけるとそれはそれは嬉しそうに顔を綻ばせ自分から駆け寄るようになった。
そればかりか、昼休み以外に校内で見かけたら、近寄りはしないものの目が合うと小さく手を振るようになった。

当の克也はというと、まるで中学生かとでも思うぐらいそんな梨音の態度に実にわかりやすくテンションがあがる。確実に縮まっていく二人の距離。

そんな二人に対して、もう一組の方はお出かけの日から2週間たった今、お互いぎくしゃくとした雰囲気となっていた。

晴海は晴海で、昼ご飯の時に一切紫音と目を合わせようとせず。元々口数の少なかった紫音はさらに口数が少なくなって無言で頷くだけになっていた。

そして、夜。

毎日欠かさずに中庭にやってきていた晴海は二日に一度、三日に一度とその足を遠のかせていた。

「…先輩、忙しいから仕方がないよね。」

今日も晴海は来ないらしい。子猫を抱きながら、紫音はぽつりと寂しそうにこぼす。

前に来なかった日、なんとなく理由を尋ねると『最近忙しくて』と言っていた。

「先輩、ほんとはお友達がたくさんいるんだもんね。俺にばっかり構っていられないよね。」

初めて会ったあの日。今でこそ四人しかいない屋上には、学校中のと言っても過言ではないほどの不良が集まっていた。その皆が、晴海に対して尊敬と憧れの眼差しを向けていた。

…俺とは、違う。

明るくて、優しくて、カッコいい晴海先輩。俺みたいな偽りではなく、真っ直ぐなその姿に俺だって素敵だなって。

毎日来てくれる晴海に、紫音はお友達になったから、自分に会いに来てくれているのだと思っていた。

「違った、んだよね。」

忘れていた。
『克也と梨音を仲良くさせたいから』
と言われていたのを。
二人はお出かけの日から着実に仲良くなってきている。初めは警戒していた紫音も、梨音に対する克也の優しさは偽りなどではないと感じ、徐々に警戒を解いていた。二人が仲良くなったのなら、晴海が自分を相手にする必要はないのだ。
元々、晴海は『可愛い子は好きだ』と言っていた。

『梨音ちゃんとは全然違う』
『梨音ちゃんの方がかわいいし』

いつもなら、誰に何を言われようが何とも思わないそのセリフを思い出すと、胸がずきずきと痛む。

「あ…、なに?」

ふいにざらりとした感覚が頬を伝い、我に返って驚いた紫音は顔に触れるふわふわとした柔らかい感触に抱いていた子猫が自分の頬を舐めたのだと気がついた。

「あは、ありがと、にゃんこちゃん。」

紫音はふわりと笑い、思いを押し込めるかのように頬を舐める子猫を抱きしめた。

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