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「お、来た来た。…って…、り、梨音ちゃん…」
「………」
自分たちを囲んでいた人垣が割れ、現れた人物を見とめて二人は絶句した。
白いうさ耳パーカーに、薄い水色デニムの短パン。スニーカーソックスを履いているため、足首までその白い肌と細い滑らかな生足が惜しげもなくさらされている。
まじまじと見つめられ、少し恥ずかしいのかほんのり桃色に染まった頬で潤みがちな大きな目を上目遣いにこちらによこす。
「…せんぱい?遅くなってごめんなさい」
紫音の手をぎゅっと握り、もう片方の手でパーカーの裾をつかみながらしゅんと謝る梨音に周りの人だかりも思わず目を奪われた。中でも断トツに悩殺されているのが克也だ。克也は梨音を見たまま動かない。完全にどこか遠い世界へ行ってしまっていた。
「うわ…、何、あの子!超かわいい…!」
「おい、男かな?女かな?」
「いや、あれは男でもイケんじゃね?あの足うまそ〜」
ひそひそとそこらから聞こえてくる梨音に対する邪な発言にいち早く反応したのが紫音であった。
ギッ!!
「ひい!」
「う、うわ!」
相手を射殺さんばかりの勢いで周囲の人間ににらみを利かせると、梨音を見ていた輩は一瞬にして蟻の子を散らすように霧散した。
「先輩、とにかく移動してくれないか。これ以上梨音をバカな人間に晒すような真似をしたくない」
「あ、ああ、…わりイ。そうだな、とにかく行こうか。ゲーセン、だったな?」
紫音の言葉にはっと我に返った克也は内心しまった、と思っていた。
昨日、カッコつけて弟の野郎に啖呵切っておいて自分が梨音に見惚れるなんざ自分が情けねえ。あれじゃ周りのバカな奴らと変わりねえじゃねえか…、くそっ!
歩き出した克也の後を晴海が追い、さらに紫音と梨音がその後に続く。
こうして初のお出かけが始まった。
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