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6

次の日。朝早くから部屋中に服を引っ張り出し、梨音はあれやこれやと鏡の前で衣装合わせに勤しんでいた。



これはおかしいかな。あ、長いズボンだと僕足が短いからおかしいかな。滝内せんぱいはすごく足が長いもんね。並んで歩くとおかしく見えるかも。


「りーちゃん?」
「ちょ、ちょっと待って!」

突然部屋の扉をノックされ、慌てて梨音は服をかき集めて端においやった。

「どうしたの?もうすぐ時間だよ?」

出掛けるとき、いつもなら30分前には用意の終わっている梨音が珍しく10分前になっても出てこない。紫音は具合でも悪いのかと心配してのぞきに来た。

「…お、お洋服が決まらなくて…」

しょぼん、と俯く梨音に、紫音はきょとんとしてしまった。いつも出掛けるときに、そんなにお洋服で悩んだりしないのに。
…久しぶりだから、迷っちゃったのかなあ?

どうしよう、と泣きそうな梨音に紫音は端に寄せた服の中から白のうさ耳つきパーカーとデニムの短パンを取る。白のパーカーは、うさぎが好きな梨音の為に母が作ったものだ。

「はい、りーちゃん。これ、好きだったよね?好きなお洋服がきっと一番似合うお洋服だよ。」
「…そ、そうかな…」

僕が好きなお洋服。滝内先輩も、好きだって言ってくれるかな。

ドキドキしながら袖を通し、お待たせ、と紫音に駆け寄る。紫音はいつものようにワックスを付けた梨音の髪をふわりと軽く手直しし、二人で待ち合わせの場所へと向かった。

学校から一緒にではなく、外で待ち合わせをしようと言ったのは晴海だ。学校から4人で出かければ、あっという間に噂になってしまうだろう。外ならば、学校の生徒に鉢合わせする確率はぐんと減る。
克也は不服そうだったが、晴海が『待ち合わせって、デートの鉄板じゃね?』と耳打ちすると瞬時に頷いた。


「…ね、しーちゃん。あれ、先輩たちかなあ?」

待ち合わせ場所に梨音と紫音の二人が着いた時。なにやら女の子に囲まれる見たことのある頭の色に人物が見えた。

「多分…。ね、りーちゃん。すごいね。見て、今いる女の子たちだけじゃなくて、遠巻きにいる女の子たちもみんな先輩たちを見てるよ。」

紫音に言われて周りを見ると、確かにそこら辺にいる女の子皆が二人を顔を赤くしてちらちらと見ている。それを見て梨音は何だか胸がちくんと痛んだ。


…先輩…、女の子たちと何お話してるんだろう…。どうしよう。お声、かけちゃいけないのかな…。僕、邪魔になっちゃうのかな…。
先輩…、女の子たちと遊びたいのかな…。


梨音は女の子たちに囲まれる克也を見てどうしてもその中に入っていくことができなかった。


そんな梨音を見て、紫音は梨音が人ごみが怖くて近づけないのか、と思い手を引いてすたすたと二人に向かって歩き出した。

「し、しーちゃん?」

急に引きずられてびっくりしながらも紫音に必死について行く。

「先輩」

二人に群がる女の子たちをかき分け、二人の前に行って声を掛ける。突如現れた強面顔に背の高い紫音を見て、女の子たちは小さく悲鳴を上げてさささ、と遠ざかった。




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