×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -




5

だが、と晴海は考える。…この行為を、おまじないだと言うのなら。この子たち、泣いてる人には誰にでもしようとするんじゃないのか…?

紫音が、泣いている誰かの頬に口を寄せる。晴海の心の中に、ふつふつと黒い何かが込み上げた。

「…ね、紫音ちゃん。そのおまじないさ。実は、あることをすると全く効果がなくなっちゃうって知ってる?」
「えっ!?し、知らない!うそ、どうしよう。りーちゃん、このおまじないが大好きなのに!」

…これも、後で克也に教えてやろう。

「せ、先輩、どうしたらいいの?なにをしちゃだめなの?」

泣きそうになっておろおろとする紫音に、にこりと微笑むと晴海は自分の口に人差し指を当てた。

「それはね、おまじないを知ってる人以外にしちゃうとだめってこと。このおまじないは知ってる人がものすごく少ないんだよ。多分学校じゃ、俺と克也と紫音ちゃんたちくらいじゃないかなあ?だからね。紫音ちゃんも梨音ちゃんも、俺たちとお父さん、お母さん以外には絶対にしちゃダメだよ。逆にされちゃってもダメ。効果がなくなるの、いやでしょ?」

晴海の言葉に、紫音はそうなんだ、と目を丸くした。

「すごいや、先輩。先輩って、何でも知ってるんだね!俺、りーちゃんにもお話しとくね!おまじないは、学校じゃ先輩たち以外にしてもされてもだめって!」

そんな紫音を見てほんの少しの罪悪感と、紫音が自分を信用していると言う大きな満足感。

「…だからね、紫音ちゃん。泣くのは、俺の前だけにしてね。」
「え?う、うん。…でも、りーちゃんの前はいいんでしょ?あと、滝内先輩と…」
「梨音ちゃんはいいけど、克也はだめ。だって、紫音ちゃんのホントの姿、知らないんだよ?」


あ、そっかあ、とうんうん頷く紫音の頭を撫でて、いいこ、と微笑むと紫音もとても嬉しそうに笑顔を返す。晴海はそれに満足し、さて、と立ち上がった。

「じゃあ、そろそろ行くね。紫音ちゃんもすぐ帰るんだよ。寮が近いとはいえ、真っ暗なんだからね。」

本当は、寮まで一緒に帰ってやりたい。だが、ここにきていることは学園の誰にも内緒で、ましてや紫音とこんな夜中に一緒にいるところを万が一にも誰かに見られでもしたら困るのは紫音なのだ。

「あ、せ、先輩…」
「ん?」

じゃあね、と歩き出した晴海を、ふと紫音が呼び止めた。何かを言いたそうにもじもじとしている。

「…おやすみ、なさい。」
「…うん、おやすみ。」

だが、何か言いたいことでもあるのかと思った紫音の口から出た言葉はただの挨拶だった。それを不思議に思いながらも晴海はその場を後にした。




[ 210/283 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]
トップへ戻る