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あちゃあ、こりゃ失敗。
晴海は克也の態度を見て苦笑いした。
なにこいつ。今まで散々遊んでたくせに本命でマスかいただけで本人目の前にしたら顔見れないとかピュアなの?
自分のせいだというのに、そんな克也を見るのは初めてで笑いがこみ上げてくる。ああ、でもだめだな。梨音ちゃんは理由がわからないから、克也の態度に傷ついてるかも。
「りーおんちゃん。克也はねぇ、すっごく恥ずかしがり屋さんなんだよ〜。お友達があんまりいなくて、梨音ちゃんみたいにきちんと挨拶ってやり合ったことがないんだぁ。だからさ、梨音ちゃん、克也に教えてやってくんない?」
晴海の言葉に梨音はきょとんと克也を見つめた。
「…せんぱい、ご挨拶苦手なの?」
「…!あ、あぁ…」
誰が恥ずかしがり屋だ!と苦々しく思いながらも、晴海のフォローに感謝する。今これに乗っておかなければせっかく昨日梨音の警戒心を解いたのに無駄になってしまう。克也は俯きながら小さな声で頷いた。
「えへ、じゃあ僕と一緒に練習しよ?」
こてんと首を傾げ、克也の前に気をつけの姿勢でぴしっと背筋を伸ばす梨音に克也も慌てて起き上がり向かい合う。
「気をつけ、ぴし!せんぱい、こんにちは〜。」
『ぴし!』と同時に両手をまっすぐに体の側面につけ、ぺこりと深々頭を下げる梨音を見てくらっと一瞬めまいを覚える。一生懸命挨拶の見本を見せようと頑張る梨音のかわいさに失いそうになる理性を必死につなぎ止めた。
「…せんぱい、むずかしい?」
だから、上目遣いはやめろって…!
「…こんにちは」
これ以上梨音と向かい合っていると色々ヤバそうな気がしたのでなんとかこの場をやり過ごそうと克也も梨音に向かって頭を下げた。それを見た晴海が必死に笑いを堪えているのを視界の端に捕らえ、克也は後でぶん殴る、と密かに拳を握りしめながら顔をあげた。
「えへへ、せんぱい、ご挨拶できましたね!」
梨音は克也の両手を取り、ぶんぶんと上下に大きく振りながらにこにこと満面の笑顔をふりまいた。
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