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2

晴海と克也は夜の町を無言で歩く。二人はお互いに今日の昼休みの事を思い出していた。


『犯されるってなに?』

あれは本気だろうか。あんなに周りから狙われていてそれがどういう事かなど知らない高校生がいるのだろうか。
…いや、梨音のことだ。きっと本当に知らないに違いない。それは恐らくあの守護神である紫音の力に他ならない。紫音はきっと梨音をまるで温室の花のように一切危険にさらさず余計な知識が入らないようにと護ってきたのだろう。

純粋培養されて出来上がったのが今の梨音なのだ。

克也が引き寄せたときに感じたあの儚く消えてしまいそうな印象は、そんな梨音だからこそだろう。
納得すると同時に頭を悩ます。『犯される』と言うことを説明するのは簡単だ。だが、その内容を聞いた梨音がどんな反応をするのか。その行為に対してどう理解するのか。

それが恐ろしいものだと説明してからさあ抱かせてくれだなんて言えるわけがない。違いをうまく説明する自信がない。

だからこそ悩んだ。克也は、やっぱりどうしたって梨音の全てが欲しいのだ。


…とりあえず、お友達から始めるしかないか…


いくら悩んだところで結果今はまだようやくスタートラインに立てた所なのだ。
上手く、落とせる様に持っていくしかない。

…まさか、この俺がたった一人の男を落とすことにこれほどまでに悩まされるとはな…。

小さくため息をついてポケットの中からタバコを出した。


「いるか?」


隣を歩く晴海にタバコを差し出すと、晴海は大げさに肩を跳ねさせた。
…こいつがぼんやりするなんて珍しい。

「どうした?」
「あ、うん、何でもないよ〜。一本もらうねー」

へらりと笑ってタバコを受け取る晴海に、ライターに火をつけて向けてやる。
すう、と軽く吸って夜空に向かってゆっくりと紫煙を吐き出した晴海と同じように克也もタバコに火をつける。

「…ありがとうな、晴海」
「へ?いやいや、何言ってんの〜、礼なんていらないよ」

紫音に話を付けて梨音とお昼を一緒に食べるようにしたと聞かされたときはびっくりした。と同時に友人想いのこの悪友に感謝した。
いつもそうだ。克也が上手く立ち回れないことは晴海が必ず先読みして上手く手を回してくれる。今回のことだって、晴海でなければ実現しなかっただろう。

「しかし、よくあの弟が承諾したな。何をしたんだ?」
「ん〜?いや、ちょっとお話しただけだよ」

克也は晴海の答えに怪訝な顔をした。一体どんな話をしたというのだろう。トイレでの様子からして今日みたいに和やかに昼食を取れるような感じではなかったが。

「おい、晴海…」
「あ〜、っと、俺今日疲れたから先行くわ〜。んじゃね〜」

理由を聞く前に、晴海は手を振りその場から去っていった。

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