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3

翌日の昼休み、紫音は梨音と共に屋上に来ていた。昼は大体二人で食べるので、友人たちにもどこに行くのかなど特に怪しまれもしなかった。

「い、いくよ、りーちゃん…」

ドキドキしながら、そっと屋上の扉を開ける。


ガチャ…


扉を開けると、初めて来たあの日のように抜けるような青空が目の前に広がる。中に入り扉を閉めると、二人してまた空を見上げた。

がちゃり、と鍵をかける音が聞こえ振り向くと、そこには初めて会ったあの日のように扉の近くの壁にもたれながらくすくすと笑う晴海がいた。

「いらっしゃい、紫音ちゃんに梨音ちゃん。」

壁から離れて自分たちに近づく晴海に、梨音は思わず紫音の後ろに隠れる。
晴海、は腰を梨音の目線にまで曲げるとにこりと微笑みかけた。

「来てくれてありがとうね?あっちに克也がいるんだよ。行こうか?」

梨音は恐る恐る顔を出し、紫音を見上げる。自分を見て無言でこくりと頷く紫音に頷き返し、ぎゅうと紫音のシャツを握る。そして、二人で先を歩く晴海の後について行った。

扉から少し奥に行った所に克也がごろりと転がっていた。

「かっつや〜!お姫様がきたよ〜ん」

晴海の声に反応し、ちらりとこちらを見たかと思うとものすごい速さでがばりと立ち上がった。その勢いのよさに梨音は驚いてひっと声を上げた。

「だ、だいじょぶだよ梨音ちゃん!待ちに待った梨音ちゃんが来てくれたから嬉しくて飛び起きただけだからね!そうだろ、克也」
「あ、あぁ…。」


気まずそうに顔を逸らし、頭を掻く克也を見て梨音は何だかいつもより心臓が早い気がした。

「じゃ、食べよっか。」

そう言って晴海が座り、袋からパンを出すとそれに従い三人も腰を下ろす。

「はい、しーちゃん、お弁当。…しーちゃん?」

座ったはいいものの、紫音は梨音の差し出す弁当を受け取らずキョロキョロと辺りを見回した。

「どしたの?紫音ちゃん」
「…いや、…他のやつらは…?」

晴海が不思議そうに問いかけると、紫音はいつもの口調で屋上についてから思っていた疑問を口にした。
いつも屋上には、不良がたくさんいると聞いていた。だが、今はこの広い屋上には克也と晴海しかいない。

「ん〜、悪いけど皆には遠慮してもらったんだよ〜。克也が皆の前だとカッコつけて梨音ちゃんに冷たくしちゃうからね〜」

晴海の言葉に梨音はきょとんとして克也を見つめた。梨音の視線に克也はちっと舌打ちをしてふいと顔を逸らす。途端に梨音がうるりと目を潤ませ、それを見た晴海がぎょっとして克也を小突いた。

「ち、違うんだよ梨音ちゃん!もう、克也!舌打ちとかやめろって!梨音ちゃん怖がらせたくないんだろ!?」
「…悪い」

そっぽを向きながら小さな声で謝罪をした克也に梨音は今度は驚いてじっと見つめた。謝った…。

よく見ると克也は晴海に言われなんだか泣きそうな顔をしている。

…やっぱり、そんなに怖いひとじゃないのかもしれない。梨音はごしごしと目を擦り、ふるふると首を振った。

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