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6

紫音が教室に戻ると、梨音が立ち上がって紫音に駆け寄り抱きついた。

「しーちゃん、しーちゃん…!」
「…大丈夫だ、梨音。なんともないよ」

よしよしと頭を撫でる紫音をうるうると涙を浮かべて見上げる。その紫音の微笑みを見て、梨音は心からほっとした。

紫音が戻るのを確認した田中が無言で自分の席に戻ろうとするのを見て、紫音はあ、と声を掛ける。

「田中、梨音を守ってくれてありがとう」

何事かと田中が振り返ると、紫音は田中に対してかすかに微笑みながら礼を言う。その姿に言われた田中本人が一番驚いた。梨音も、不思議そうに紫音を見つめている。

「梨音、授業が始まる。そろそろ席に着こうか」

問いただしたくとも梨音のナイトを演じている紫音には今は聞けない。梨音はこくりと頷くと大人しく、だが紫音を何度も振り返りながら席に着いた。


当の紫音は少しだけ気分が高揚していた。

晴海先輩、俺がお願いしたら、俺の事内緒にしてくれるって言ってた。それになにより、にゃんこちゃんの事かわいいって言ってくれた。ほんとは意外にいい人なのかもしれない。


にゃんこが好きな人には、わるいひとはいないよね、きっと。

だからそんな晴海が任せた人なのだから、田中君だってきっといい人のはず。そう思ってきちんと礼を言ったのだ。

晴海の出した条件が脅しであるとは気づかずに、紫音は内心にこにことしながら机の上に教科書を出した。



end

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