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2

そのまま学校に戻り、克也と別れた後晴海は寮の中庭を歩いていた。
なんとなく、部屋に戻りたくなくてしばらく時間をつぶそうと考えたのだ。中庭を歩きながら昼間の事を思いだしていた。

紫音に振り飛ばされた時、信じられないと思ったと同時にとても嬉しくなった。克也以外、自分と均衡する実力を持つものに出会ったのは初めてだった。
しかも、恐ろしく勘がいい。
『今遊びたい気分だ』
と晴海が言っただけで、梨音が危機的状況にあると気付いたのだ。

おもしれえ!

紫音の目に、力に、今までになく激しく惹かれる。降伏させ、屈服させてみたいと思った。そんな相手は初めてだった。

興奮のあまり、紫音がトイレに駆け込んだのに気付くのに遅れた。

「やっべ!」

中では今頃克也が梨音を組み敷いているはずだ。最中に襲われでもしたらひとたまりもないだろう。それよりも、梨音が凌辱されているのを紫音が目の当たりにしたとしたら。

「克也が殺されちまう」

晴海は慌ててトイレに駆け込む。初めに目にしたのは、床に尻もちをつき口端から血を流す克也だった。大事な友人がやられ、かっと頭に血がのぼりやり返そうと紫音を見た時。

梨音を抱きしめる紫音を見て、晴海は動けなかった。


あれは、自分の知る弟君ではない。


梨音を抱きしめるその姿は、端から見れば守護者のそれであろう。
だが、晴海の目には小さな子供が必死に兄にしがみついているようにしか見えなかった。

「俺の目、どうかしちまったのかなあ…」

あんなゴツい男が、梨音よりか弱く見えるだなんて。

…か弱く、だって?
いやいや、それはないない。

自分の頭に一瞬浮かんだその考えに晴海はぶるぶると頭を振る。
それより、梨音ちゃんと克也だ。
今日のことで益々警戒心は強くなるだろう。もう、そう易々とは梨音には近づかせてもらえないかもしれない。せっかく克也が、生まれて初めて本気になったんだ。なんとかしてやりたい。


ぶらぶらと中庭を歩きながら考えていた。


奥の方にある、小さなベンチに腰をかけてタバコを吸おうかとポケットから取り出す。


かさり…


草むらの向こうから、誰かがやってくる気配がした。

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