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2

不良たちに連れられ、二人は屋上に向かった。
キィ、と扉が開けられ一歩踏み出すと、抜けるような青空が広がる。

「うわぁ〜」

屋上など初めてきた梨音は、空を仰ぎ驚きの声を上げた。

「しーちゃん、すごいね。お空が近いねー!」

紫音のシャツを引き、青空に向かって手を伸ばす。紫音も梨音と共に空を眺めていると、後ろの方からくすくすと笑い声が聞こえた。

振り返ると、屋上入り口の壁にもたれてくすくすと笑う一人の男がいた。少し長めの明るい茶色の髪、背は紫音より低いが威圧感がある。ちょっとたれ目の甘いマスク。女ならイチコロで落ちるのではないかと思うほど美形だ。
笑っていた男はゆっくりと壁から離れ、二人に近づいてきた。梨音は怯えてまた紫音の後ろに隠れる。紫音の前まできたその男は、梨音の目線まで腰を曲げ、紫音の後ろに隠れる梨音を覗き込んだ。

「君が梨音ちゃんだね〜?噂通りかっわいいねぇ。お空好き?」

優しく笑いかけられて、おずおずと顔を出しこくんと頷く。

「かぁわいい!俺ね、秋田晴海だよ〜。二年生、よろしくね?」

頭を撫でようと手を伸ばした瞬間、紫音がその手を掴んだ。晴海が顔を上げ、腰を伸ばし紫音と向かい合う。

「…んでもって、君が弟の紫音くんだよね?噂通り怖い顔でお兄ちゃんバカだねぇ〜。手、離してくんない?もう触ろうとしたりしないからさ」

紫音はゆっくりと手を離す。そして、お互い無言で睨み合う。晴海の顔は笑っているが、目は笑っていなかった。笑いながら、紫音を殺気のこもった目で睨みつけている。

「し、ししし、しーちゃんのこと、睨んじゃだめです!」


そんな二人の均衡を破ったのは梨音だった。ぷるぷると震えながら、紫音の後ろから晴海を必死に睨んでいる。
晴海はそんな梨音にふにゃりと顔を緩め、かわいいな、と笑いかけた。

「梨音ちゃんは優しいね〜。ごめんねぇ、もう怖い顔しないからね?あ、そうそう、君を呼んだのは俺じゃないんだよね。ほら、あっち。あそこでエラそうにフェンスにもたれてこっちをじっと見てる男だよ〜。」

二人で晴海が指さす方を見ると、広い屋上の端の一角に不良たちが溜まっている。その不良たちが一歩離れ取り囲む一人の男がいた。

「いこっか。」

晴海はにこりと笑い、ついておいで、と二人を先導して歩く。二人はそれに無言で従った。

「克也〜、お姫様が来ましたよ〜。」

晴海が近づくと同時に、囲んでいた人垣がモーゼの十戒のごとくさっと割れた。色とりどりの頭の柄の悪い男たちが紫音たちを睨む。梨音はびくびくと怯え、必死に紫音にしがみついていた。

「だぁいじょーぶだよー。梨音ちゃんにはなんもさせたりしないからぁ。ね、克也。」
「…ああ」

克也と呼ばれた男が紫音の後ろに隠れる梨音をじっと見つめる。赤く染めた髪に、青のカラコン。切れ長で、くっきりとした二重。通った鼻筋に薄い唇。クールな雰囲気を持つ、こちらもまた晴海とはまた違った超絶な美形だ。梨音は、紫音の後ろから顔を出して同じように克也を見つめていた。


「…木村梨音。俺と付き合え。」


克也の口から出た言葉に梨音はぽかんと口を開けた。

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