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9

四月。桜舞い散る中、新一年生たちが正門を潜り抜ける。新生活への期待。不安。そんな初々しい新入生たちを、微笑んで見つめる。

「会長」

呼ばれて振り向く先には、崎田がいた。太陽はもう三年生。最上級生だ。崎田は、二年になってから生徒会会計をしている。

「もうすぐ入学式が始まりますよ」
「うん、わかった。先に行ってて。」

太陽は、校庭の桜を見上げる。

野々宮は卒業まで再び会長に立候補する事も無ければ、推薦も辞退した。卒業式の日、太陽に『あとは頼むぞ』と笑顔を向けた。その後、野々宮はアメリカに留学したらしい。

それを聞いた崎田に、唐津先輩を追いかけて行ったんだったりしてなんて意地悪っぽく言われて思わず苦笑いした。

アキラとは、あれ以来会っていない。一度も戻ってくる事も無ければ、メールや手紙も来たことがない。
それでいいと思っている。
アキラが、待っててくれと言った。自分を捕まえに来ると言ったんだ。

太陽が生徒会長になってから二年、学園は少しづつ変わっていった。太陽の公言したように、ほんの少しづつだけど、変わっていったのだ。

ねえ、アキラ。俺は約束を守れたかな。この学園を守れているかな。

生徒たちが皆体育館へ入り、静かになった校庭で太陽は一人ただただ桜を見上げる。

「うわ…!」

突然に突風が吹き荒れ、桜の花びらが大きく舞った。思わず目を細め、舞い散る桜を目で追う。

一面の桜吹雪。

太陽は細めていた目を大きく見開き、桜吹雪の中駆け出した。

思い切り、手を伸ばす。


「お帰りなさい、アキラ…!」
「…ただいま、太陽。」


桜舞い散る中、どちらからともなく唇を寄せた。


醜いカラスは今、太陽の中、黄金に輝く。


end
→あとがき

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