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8

ベンチに腰掛け、ふと電光掲示板の案内を見上げる。
…もう行かなきゃな。
アキラは手荷物を肩にかけ、ゆっくりと立ち上がった。

崎田に手紙を渡したときにアメリカ行きを告げると、ものすごく怪訝な顔をされた。それで、怒られて手紙を渡すことを拒否された。
それでも、理由を言うと渋々だけど手紙を受け取ってくれた。

『あんたがいない間に僕に心変わりするかもよ?いいの?』
『その時は奪い返すさ。なんてったって俺はカラスだからな。キラキラしたものが大好きなんだ』

ふん、と鼻で笑って崎田はくるりと向きを変えて去って行った。

太陽は、あんな手紙ひとつで目の前から姿を消す自分を許してくれるだろうか。アメリカ行きを決めたのは自分だけど、それを直接言う勇気はなかった。
太陽の顔を見ると、泣いてしまいそうだったから。

…もし許してくれなくても、何度でも会いに行こう。なんせあいつは10年以上も俺を追いかけてくれてたんだ。今度は、俺が追いかける番。

「―――――――アキラッ!!」

後ろから、大声で自分の名を呼ばれびくりとした。まさか。なんで。
振り向くと同時に、視界いっぱいに見覚えのあるネクタイ。そして、いつもの柑橘系の香水の香り。

「たい、よ…、――――――…!」

言葉を紡ぐ前に、口づけでその口を塞がれた。

ここは空港で、周りには人がいて、なんて全く頭になくて。ただ与えられる温もりに身を任せた。

しばらくして、ゆっくりと太陽が離れる。アキラの両頬を挟み、こつんと額を合わせてアキラを見つめた。

「…待ってる。待ってるから。必ず、帰ってきて。俺のところに、必ず。」
「…ああ、約束だ。」

静かに、二人の頬に一筋の涙が流れた。

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